風雲電影院

愛のむきだし

2014年1月23日
目黒シネマ

 『冷たい熱帯魚』に衝撃を受けて、それまで一本も観ていなかった、園子温監督の映画が猛烈に観たくなっていた。中でも気になっていたのが、この『愛のむきだし』。上映時間237分! なんじゃ、こりゃ! でも観たい。評判もかなりいいし。でも、どこで観ればいいんだ? DVDやブルーレイにはなっているようだが。これは名画座待ちだろうと思っていた。新文芸坐あたりでかけてくれそうだが・・・と思っていたら、目黒シネマでの上映予定に入った。これは何が何でも行かなくちゃ。

 約4時間という型破りの上映時間。まあ2本立ての映画を観に行ったと思えば、それほど苦痛な長さでもない。学生時代はオールナイト4〜5本立てなんかにも行っていた事だし、あれに比べれば気楽なものだ。途中で10分間の休憩が入った。それも意図してのことかどうかはわからないがブツッと唐突に前半が終わる。結局、237分という上映時間はそれほど苦にならなかった。

 ただ、どうなんだろう。私は前半は面白く観ていたが、目黒シネマのチラシに書いてあった「想像もできない衝撃的でドラマチックなクライマックス!」には引いてしまった口だ。最終章とタイトルが出てからの最後の30分は、「早く映画が終ってくれればいいな」と思っていた。

 宗教に対する不信感を抱いたのは実は高校生の時。友人に誘われてキリスト教の教会に行ったときに、「愛について」という説教を受けて、なるほどとは思ったけれど、どうも愛の押し売りのような感じがして反発を覚えたのだった。以来、“愛”を押し出してくるものには、どうしても警戒してしまう。この映画のラストはもう“愛”“愛”“愛”のオンパレード。こういうのに感激する人もいるのだろうけれど、私は急に引いて行ってしまった。だって、私が宗教に不信感を抱いた原体験は、この“愛”の押し売りなんだもの。

 この映画の本筋は、新興宗教に洗脳されてしまった女性を救出して洗脳を解くという話。その結果として“愛”と言われてもなぁというのが、私の率直な感想なのだ。“愛”があれば、“愛”こそがという思想に胡散臭さを感じてしまう私の方が少数派なのかもしれないが、4時間見せられて、これかよという気になってしまった。

 前半は割と好き。牧師の家で生まれ、毎日父親から懺悔させられて、懺悔するネタに困って本当に悪いことをするようになるという話は面白い。ユウ(西島隆弘)がヨーコ(満島ひかり)に恋をするのだが、誤解が元ですれ違うとかも好き。ただ、突然話が“盗撮”“パンチラ”なんてのになっていくと、やはりちょっと引きましたね。

 渡辺真起子は、去年、三浦大輔演出の『ストリッパー物語』に出ていて、いい女優さんだなぁと思っていたが、ここでも凄い芝居をしている。その渡辺真紀子演ずるカオリを愛するようになってしまい、ユウの父テツ(渡辺篤郎)は泥沼に落ち込んでしまうんだから、単純に“愛”こそがすべてとは言えないわけで、この映画のラストの“愛”の盛り上げには、どうも引いてしまうわけですよ。

1月24日記

静かなお喋り 1月23日

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