風雲電影院

愛の渦

2014年3月13日
テアトル新宿

 『愛の渦』は三浦大輔が主宰している劇団ポツドールの2005年の上演作品。私はこれに間に合わなかったが、翌年の『夢の城』からずーっと三浦大輔作品を追いかけている。この『愛の渦』は仕方なく戯曲で読み、舞台は2009年の再演のときに観ることができた。

 やはり舞台と映画では、違うんだなぁと思った。最近は三浦大輔の舞台にも女性客が増えたが、私が観始めたころは客層は圧倒的に男だった。会場に入ると岡本靖幸の『セックス』『マシュマロハネムーン』が大音響で鳴っている。それがもう、これからイケナイモノを観るという、不安感と期待感を感じさせる。客電が落ち、場内が真っ暗になって、この大音量のなんだか不健康そうな音楽がブツッと切られると物語が始まる。この『愛の渦』に至っては、乱交パーティーが行われるマンションの一室。しかも出演者は全員バスタオルを撒いているだけの状態。ドキドキしてしまったのを憶えている。

 乱交パーティー目的で集まった男女が、最初のうちはぎこちない自己紹介をしたりして、お互いに距離を取っているあたりが妙にリアルなのは舞台どおり。おそらくこの舞台のために三浦大輔自身が体験取材したのではないだろうか? それが一周目のセックスが終った時から、徐々に距離が近まり、やがては本音が炸裂しだす。このへんが三浦大輔お得意の展開。口には出さねど腹に一物状態から、一度堰が切れると当人がいない瞬間を狙っての、本音、悪口の言い合い。

 まぁ、そういう話だからセックスシーンはあるわけだが、やはり映画は映画になっちゃう。カット割りや、アップ、引き、俯瞰といった積み重ねで舞台なんかよりは詳細に描かれるのだけれど、それはもうポルノ映画のそれ。舞台のようなリアルさが無い。舞台のときは、それこそ、「これは観てはいけないんじゃないか」という、こちらがのぞきをしている犯罪者のような気持ちになったものだが、映画になってしまうと不思議と罪悪感が無くなってしまう。

 舞台版との大きな違いは、その結末だろう。映画版には舞台版に無いエピソードが書き加えられている。それは映画的着地点を感じさせるものだった。ポツドール、三浦大輔の芝居というのは、最後が唐突に終わってしまう。その終り方はカーテンコール拒否のような作りになっていて、観終った観客は茫然自失。拍手は起きない。客はそれぞれ無言のまま、ショック状態で劇場を去っていくのだ。それがこの映画版の結末ときたら、なにかホワッとした青春映画のような趣き。映画を観に来た観客のための、映画らしい結末というような気がする。

 映画版で女子大生役を演じた門脇麦は、昨年の三浦大輔演出の舞台『ストリッパー物語』で初めて観た。あのときは女子高生役。ダンスを学びにアメリカに留学する可憐な少女の役だったが、今回はヌードで、セックスシーンもある。まだ若い女優さんだが、これから注目の人になっていきそう。

3月14日記

静かなお喋り 3月13日

静かなお喋り

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