風雲電影院

ある戦慄(The Incident)

2013年6月24日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1967年作品。これ、映画館で見落として、本当に長い事気になっていた映画。学生時代に名画座で観ていてもおかしくないのに観ていない。確か名画座でも上映しているのをほとんど見かけなかった気がする。

 「観終ると、いやーな気になるよ」と言われていたけれど、ホントにそんな映画。最近はあまり経験がないけれど、日本でも昔はこういう迷惑な乗客が乗り込んできて、誰も見て見ぬふりなんてことがよくあって、私も何回か遭遇したことがある。それを注意するなんていうことは誰もしないものなんだよね。触らぬ神に祟り無し。私を含め、みんな知らんふりしてた。

 この映画には、そんな迷惑なふたりの若者乗り込んでくるが、居合わせた乗客たちもみ〜んなそれぞれに問題を抱えている連中ばかり。それが、このふたりの若者が迷惑行為をしていることで、その病原がさらに深くなって行ってしまうという脚本が凄い。これ、小説家が小説にしたら前半の乗り合わせた人物たちの、列車に乗る前の描写がとんでもなく長くなってしまうんじゃないだろうか。

 「いやーな気になる」というのは、このふたりの迷惑な若者のこともさることながら、乗客たちがまたもう実に嫌なのだ。ごく平凡な人たちなのに嫌だと感じさせる映画なものだから、もうその相乗効果的に、ホントにいや〜な映画になっている。ほとんど人間不信に陥るよ、これは。

 観ていて思うのは、いかになんでも無法者の相手はふたりだけ。乗客は軍人ふたりも含めて、そこそこ戦えそうな男が何人もいる。地下鉄職員と一戦やらかしそうになった黒人青年と軍人ふたりが組んだだけでも、どうにか鎮圧できそう。もちろん全員が一斉にかかればどうにでもなるだろうにと思える事。そういう展開になるのかなと思っていると、そうはならない。それがまたこの映画の嫌らしいところ。

 結局、腹に据えかねた、左手をギブスしている男が立ち上がり、たったひとりで、ふたりの若者を倒してしまう。倒れた男を、ギブスでこれでもかこれでもかと、ほとんど過剰防衛とも思えるほど殴りつけるシーンは、まさに戦慄もの。

 そして列車は駅に着き、乗客たちはみんな降りていく。
 いや、ひとりだけ残っている人間がいる。どうもホームレスのような男で、最初から最後まで座席に横になって眠り続けている男。その男が座席から転がり落ち、床で眠り続けている。・・・ん? この男は本当に眠っているのか? 車内であれだけ大騒ぎになっていたのに気が付かないで眠っていたのか? ひょっとして死んでいたのではないのか? みんなこの男のことはほったらかしで、いなくなってしまう。もしあの男は死んでいたとしたら。そう考えると、この映画、最後の最後まで、いやーな気になる映画だ。

6月25日記

静かなお喋り 6月24日

静かなお喋り

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