風雲電影院

名探偵ゴッド・アイ(Blind Detective 盲探)

2013年12月10日
シネマート六本木

 わざわざ酔興にも日帰りで大阪まで行って観た、ジョニー・トー監督『毒戦』は面白かったけれど、ガチなシリアス路線。楽しい映画を観るつもりで大阪まで行ったつもりが、結構沈鬱な気分になって帰りの新幹線に乗った。

 そしてまたジョニー・トーの新作が公開された。えっ? 上映時間130分! しかし『毒戦』みたいな話を2時間以上見せられたら堪らないなぁという思いは杞憂だった。いや、これは確かに長い。ラストに至るまで、なんだか寄り道がウネウネとある。でも、それがまた楽しいんだなぁ。もう、130分なんぞと言わず、いつまでも観ていたくなる。

 おそらく『毒戦』への反動なのかも知れないが、とにかくハチャメチャ。
 ストーリーとしては、網膜剥離によって目が見えなくなった刑事ジョンストン(アンディ・ラウ)が、報奨金目当ての探偵になる。元同僚だったシト(グォ・タォ)と、パイプ洗剤ぶち撒き犯逮捕を競うのが導入部。そこに女性刑事ホー(サミー・チェン)が絡んでくる。ジョンストンは未解決事件の捜査をして報奨金を得ているのだが、ホーは昔の少女失踪事件に個人的に興味を持っていて、この事件を解決してくれたら別に金を出すと持ち掛け、ふたりで捜査に当たる。
 とでもいうものなのだが、アンディ・ラウもサミー・チェンもぶっ飛んでいる。このふたりでジョニー・トーといえば、ずっと前に『ダイエット・ラブ』とか『ニーディング・ユー』でもコンビを組んでいて、あれをさらに発展させているようだ。もう爆発しちゃってる。そう、これって、テーマは探偵ものなのだけれど、恋愛ドラマとしての要素もある。さらには猟奇犯罪ものなのに喜劇という、わけのわからない珍作。これって、もちろん褒めてます(笑)。

 目の見えない探偵の捜査方法と言うのが、科学捜査だとか聞き込み調査だとかではなくて、現場に立ってみて、被害者や加害者の立場にたって考えるというのは、ほかの映画でもあるけれど、ちょっと無茶な推理に行き付く。女性の連続失踪事件は、共通して女性が男に振られた直後に起きている。ということは、彼女たちは移動が億劫になりタクシーに乗る。それじゃあ犯人はタクシードライバーだという三段論法は、開いた口がふさがらなくなってしまうでしょうが(笑)。

 結局、ホーの追いかけていた少女に辿り着くのに、マカオと元朗の二か所での騒ぎがあり、それは別件だったことが判明。そして、ホーの追いかけていた少女の事件の真相はというと・・・これがもう唖然とするばかり。こんな意外な展開になるとは思いもよらなかった。

 そしてラストシーンの、あっけらかんとした事。いいなぁ、こういうジョニー・トー。

 それと今回うれしかったのが、全篇に渡り食事のシーンが盛りだくさんだったこと。ステーキや鉄板焼き、テーブルいっぱいの中華料理から、屋台のもつスープ、果てはカップ麺まで。どれもおいそうだったなぁ。

12月11日記

静かなお喋り 12月10日

静かなお喋り

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