風雲電影院

冒険者たち(les Aventuriers)

2018年2月19日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 言わずと知れた1968年、ロベール・アンリコ監督作品。私も御多分に漏れず、若い時にこの映画にすっかりやられちまって何度となく診ている。
 映画というものが2時間の夢を見せてくれるものならば、この映画は男が本当に見たいと思っている夢を巧妙に見せて、いい気持にさせてくれる映画だ。

 タイトルパック。これは12拍子になるのだろうか、軽快なテーマ局が流れて、それにジョアンナ・シムカスがバイクを押して現れると4拍子のレティシアのテーマにに変わる。さらにこの二曲が交互に流れていくと、これだけでもう、これからまた『冒険者たち』という夢の世界に浸れるんだとワクワクしてくる。

 舞台がパリからコンゴの海、どこか知らないレティシアの生まれ故郷の田舎町。そしてあの海に浮かぶ要塞のある港と、次々と変わっていく風景のよさには事欠かない。さらには二枚羽根の飛行機、レーシングカー、クルーザーといった、あまり一般の人は乗ることない乗り物に乗るシーンが続く。これはもう、乗り物好きな男にとっては、まさに夢の世界ですよ。それも絶対に叶わないというほどの夢ではなく、ひょっとしたら自分だって、金と暇さえあれば乗れるかもしれない思わせるところが上手い(ずるい)。

 宝探し基地のような隠れ家、銃撃戦いった男の子が好きなことがたっぷり詰まった、ワクワクする冒険譚でありながら、恋愛ものでもあったりする。それも男ふたりに女ひとり。三角関係の話。二枚目(昔はイケメンなんて言葉はなかった)のマヌー(アラン・ドロン)、眩しいくらいの美しさのレティシア(ジョアンナ・シムカス)、中年男(文字ょ見る時は7老眼鏡をかけるからかなり年が行ってる)のローラン(リノ・ヴァンチェラ)。レティシアを頂点とした三角関係とみると、どうしても美男美女のカップルになりがちなところが、レティシアはローランに、あなたと一緒に暮らしたいとそっと打ち明ける。これはもうねえ、男はみんなローランに感情移入しますよ。この映画に出てくる乗り物と同じで、あんな超美人な女性にモテることはないだろうけど、ひょっとしてと思ってしまう。これがこの映画の上手い(ずるい)ところ。それでいて、さらにこの映画が上手い(ずるい)のは、ローランとマヌーは男同士の友情で繋がっていてること。その意味では、これはローランを頂点とした三角関係の映画という風にも見える。レティシアにローランが愛を打ち明けられた瞬間から男たちはみんなローランに感情移入しているから、ラストシーンで死んで行くマヌーにローランが「レティシアは、お前と一緒に暮らしたいと言ってたぞ」なんて台詞を吐くとシ゜ーンと来てしまう。それに続くマヌーの「この大嘘つきめ」の台詞を耳にすると泣いてしまいますよ。上手い(ずるい)な〜、この映画。

 原作はジョゼ・シ゜ヨバンニの『生き残った者の掟』。ジョバンニは原作と全然違うと怒ったそうだ。あとから日本でも翻訳が出た小説を読んだら、なるほどまったく別の話といっていいものだった。ジョバンニはそれで原作どおりに自分が監督して撮り直した。でも私が好きなジョゼ・ジョバンニの映画は監督2作目の『ベラクルスの男』。
 アンリコが原作通りに映画化していたら、まったく評判にもならなかっただろう。なにしろ恋愛とはかけ離れたハードな男の世界の話なのだから。

 この映画は、のち日本映画に多大な影響を与えた。丸パクりした映画もあって、まあ、あまりうまくいっていない。
 ラスト、レティシアのテーマをピアノ曲にした音楽が流れる中、カメラが要塞魔の上空へ引いて行くエンドロールを観ていたら、ある日本映画を思い出した。藤田敏八監督の『八月の濡れた砂』。漂っているヨットを映しながらのエンドロールで石川セリの主題歌が流れるあれは、なん気のせいか似てたな〜。

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