風雲電影院

キャロル(Carol)

2016年2月19日
TOHOシネマズ日本橋

 ミステリ女流作家パトリシア・ハイスミスが別名義で書いた普通小説 The Price of Salt の映画化。

 パトリシア・ハイスミスが自分が書いたことを長年にわたり隠していたのには訳があって、この作品は女性同士の同性愛の話であり、しかもハイスミス自身が同性愛者だったことをカミングアウトしたのだからミステリファンは驚いた。

 あとになってから、彼女の書いたたくさんのミステリ小説を、同性愛者が書いた小説と分析する人も多いだろうが、カミングアウト以前にそれに気が付いた人は少ないだろう。私はというと、それほどハイスミスを読んでないので何とも言えない。というか、パトリシア・ハイスミスってどちらかという苦手で、あまり手が出なかったというのが本音かもしれない。

 どうも男同士の同性愛というのも、私にはよくわからない世界だから、ましてや女同士の同性愛というのは、まったくわかんない。それでも男の私からしても、この映画のふたりはきれいで、同性愛うんぬんよりも画面に見とれてしまった。それは、きっと時代設定をそのまま残しているせいなのかもしれない。この小説が発表されたのが1952年。そのころの服装や化粧で現れるケイト・ブランシェットやルーニー・マーラは、現実感がない美しさ。これが現代に置き直されて映画化されたら、ちょっと生々しくて嫌だなと思ったかもしれない。特にパトリシア・ハイスミスの視点にあるテレーズを演じたルーニー・マーラの美しさときたらどうだろう。『ドラゴン・タトゥーの女』でも、きれいな女優さんだなぁと思ったけれど、『キャロル』での美しさはどうよ。惚れてしまいますがな〜。

 ふたりはやがて親密な関係になって、ふたりで旅行に出かけて、そういう関係になって・・・って、ベッドシーンまであって、こういうのって、男としては見てはいけないものを見ちゃっているような・・・というのが、そもそもの偏見とか差別に繋がるんだろうなっていうことは、よくわかるんですよ。現実にかつてのアメリカでも同性愛が差別されて、そういう小説やら映画は日の目を見なかったわけだから。だからこの映画がゴールデングローブ賞やアカデミー賞にノミネートされるっていうのもわかる気がするんですけどね。

 ただ思うのは、それはよくわかるし、ふたりの女優さんは素晴らしいんだけど、やっぱり私には「よくわかんない」世界の話だなぁということ。そりゃ、そうだよね。私は男なんだから。

2月20日記

静かなお喋り 2月19日

静かなお喋り

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