風雲電影院

チェイサー

2015年4月13日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 劇場公開を見逃してしまって、私が以前見たのは5年前にWOWOWで放映されたとき。録画しておいたものを、夜中に途中まで観て寝ようと思ったら、やたら怖くて面白い映画だったので、そのまま最後まで観てしまった。あのときには、これはもう韓国映画は日本映画なんかより遥かに凄いところまで来てしまっていると感じた。なんだか日本映画は腑抜けたものばかり作ってるように思えたくらいショックだった。そのあと園子温の『冷たい熱帯魚』なんていうものが出てきて、日本映画もやるじゃんと思ったものだけど、あのころは完全に韓国映画のインパクトに日本映画は負けていると思った。

 韓国では実際にあった事件を基にした映画化作品は、必ずヒットするそうで、これもそんな一本。ただし韓国映画の場合、かなりの脚色が許されるようで、あくまでも実際にあった事件をヒントにして作っているという形。『チェイサー』も主人公はデリヘル経営者の元刑事という設定。実際はそんな人物はいなかったらしいのだが、この設定は上手い!

 それと『殺人の追憶』でもそうだったが、警察がほんとに無能に思えるような描かれ方をしていること。もうこうなると、脚本の作り方の杜撰さが気になってくる。最初に観たときには、犯人の異常性にばかり目が行って気にならなかったのだが、警察の動きがあまりに変。こんなの作っちゃって警察から文句は来ないのだろうか? 署内でもう刑事でもなんでもない主人公が犯人をボコボコに殴っていても、誰も止めに入らないでそのままにしておく。とても近代国家警察とは思えない。そうかと思うといくらなんでも逮捕状がないままに拘留したとはいえ、12時間程度で殺人の犯行を供述している男を保釈するものかねぇ。さらに言えば、泳がした形で釈放したというのに、あとを着けるのが女性刑事ひとりってありえないだろ。そこでも犯行が行われて、無能な女性刑事しか現場付近におらず、パトカーの警官は居眠り。しかもそれでも容疑をかけられないって何? さらには庭に別の死体を埋めるなんていうことまでするのに、それも警察は見張っていない。容疑者の棲み家を知らないままで釈放するってある?

 脚本は穴だらけのくせにして、それではこの映画がつまらないのかと言うと、そうではなくてものすごく面白いんだから、こうなると杜撰な脚本なんてどうでもいいのかもしれない。やや中だるみはあるものの、この緊張感は何なんだろう。ヒリヒリするような恐怖感。これ、女性が観るともっと怖いだろう。R指定は、韓国ではR−18、日本ではR−15。子供には見せたくないことは確か。

 韓国では駐車違反の取り締まりが日本みたいに厳しくないという話を聞いたことがあるが、この映画を観ていると、どうも本当らしい気がしてくる。狭い坂道にズラーっと駐車している車、車、車。パトカーが入ってきても何もしない。映画ではさんざんバカにされて描かれる韓国の警察だが、とりあえずまずこの辺からなんとかしないとまずいんじゃないかと、観ていて感じましたけどね。私が言うことでもないだろうけど・・・。

4月14日記

静かなお喋り 4月13日

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