風雲電影院

マンハッタン無宿(Coogan's Bluff)

2014年9月1日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1968年作品。これを観たのは、これで何回目だろうか? 確か映画館で2回。それも封切りでは観て無くて2回とも名画座だった。そのあとおそらくテレビで吹き替え版で観ている。「あっ、これは吹き替えで観てるな」と思ったのは、スパゲティソースを調理しているシーンがあって、字幕ではスパゲティとは出てこなかったものの、英語でスパゲティと言っているのに気が付いたからだ。吹き替えで確かにスバゲティと言っていたような気がする。もちろんパスタだなんて言ってない。スパゲティだ。

 ファーストシーンを、よ〜く憶えている映画。荒野が映って、草むらに裸の男がいて、何か手づかみで食べている。な、なんだこの男、原始人か? ええーっ! これニューヨークを舞台にした現代劇じゃないのかい? と最初に思わせる。と、次にこの男がライフルを持っているのがわかる。インディアンか。おいおい、これ、西部劇じゃないよな!? 最初に観たときは、フィルムを間違えたのかと思ったほど。そこに遠くからジープがやってくる。ということはやはり現代劇だ。砂埃で汚れまくっている、乗り心地悪そうなジープ。乗っているのはもちろんクーガン保安官補(クリント・イーストウッド)。無線で保安官から命令が出ているが、スイッチを切ってしまう。その無線装置も砂埃まみれ(笑)。

 このあと、インディアンをあっさり逮捕。保安官事務所に戻ると思いきや、女の家に寄り道。逮捕した男を家の前の柱に手錠で繋ぎ、家の中へ。女を抱く前にまずは風呂。と、そこへ保安官が乗り込んでくる。自分勝手な事ばかりやってけしからん。そんなにひとりで行動したけりゃ、今すぐ出張に行け! 20分後に事務所に来るんだぞと保安官は出ていく。20分? それならと女を湯船に引きずり込むクーガン。

 いいねぇ、ツカミばっちりじゃないの! ドン・シーゲル監督の面目躍如。さすがですなぁ。このツカミの部分で、クーガンを女たらしの田舎者と印象付けさせる。マカロニウエスタンで一皮むけたイーストウッドを再び『ローハイド』の女たらしのロディに引き戻す。お見事!

 それで次のシーンがいきなりヘリコプターでマンハッタンに向かうクーガン。頭にはカウボーイハット。靴は先のとんがったブーツ。みるからに田舎者だ。ニューヨークにやって来たのは、容疑者引き取りのため。ところが、リー・J・コッブの警部補に急には無理だと言われてしまう。そこで警察署内で犯罪者保護官の女性ジュリー(スーザン・クラーク)に、犯罪者学に興味があるから話を聴かせてくれとデートに誘いだす。女たらしという伏線が効いてくるのだけど、ようするにクーガンにはそんな学問なんてまるっきり興味なし。閉店時間までレストランで粘って、続きは彼女の家でって。このジュリーって女がやすやすと自宅にクーガンを入れちゃう。この時点でどうも彼女はクーガンに興味があるんじゃなくて、学問と仕事の話を聞いてくれるクーガンに、もっと話してやろうって思ってるだね。でもこのジュリー、世間知らずなのか、無防備なのか、ただ真面目なのか、ちょっと考えられないバカ。だって相手はあきらかに女たらしでセックスにしか関心ないってこと、わかりそうなものじゃないの!

 それでもって、なんだかんだあって、クーガンとしては、手っ取り早く容疑者を引き取って早く帰りたい。しかし、面倒な手続きは嫌だ。なんかね、クーガンもどっちかっていうと、あまり頭は良くない感じ。刑務所に乗り込んで行って、半ば強引に容疑者を連れ出して、故郷アリゾナへ戻ろうとする。ところが、それを容疑者の恋人が察して、ヘリ乗場で襲い、容疑者もろとも逃げてしまう。恋人の住所を掴んだクーガンは、さっそく乗り込むものの、彼女に案内されたところで返り討ち。再び恋人のところへ行って、この恋人もモノにしちゃう。なんかクーガンの前ではどんな女も、「この男となら、別にHしてもいいわ」ってなっちゃうらしい。もう、そろいもそろってバカですわ。

 ラストだって、ヘリで去って行こうとしてるクーガンのところに、真っ赤な服のミニに真っ赤なブーツ姿のジュリーが走ってきて抱き着いてキス。空へ舞いあがるヘリに投げキッスって、なにこれ? まじめ人間らしいジュリーもメロメロ。単なるバカじゃん。

 これで思い出すのは『真夜中のカーボーイ』。テキサスの田舎町の皿洗いの青年ジョン・ボイドが、ニューヨークへ行けば、女は金払ってでも自分に抱いてもらいたがるはずだと、カウボーイハット姿でやってくる。ひょっとしてあの青年は、『マンハツタン無宿』を観て、ニューヨークにやってきたんじゃないかと思ってしまうところだが、『真夜中のカーボーイ』は、『マンハッタン無宿』の半年後に公開されている。これは偶然なんだね。でもアメリカ西部の田舎町の青年ってあのとき、みんな本当にそういう風に思ってたのかもなぁ。

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