風雲電影院

ダーティハリー(Dirty Harry)

2013年11月11日
三日月座Base KOMシネマ倶楽部

 1971年作品。これはたしか最初はロードショウで観て、そのあとも名画座を追いかけて観ていたから、都合3〜4回観ているはず。それでもビデオでは観ていないから、もう40年ぶり近くになるんだと思う。それでいて細部まで結構憶えているし、台詞まで憶えている。感受性の強い時期に観たこともあるが、それだけ面白かったんだろう。

 ご存じクリント・イーストウッドの当たり役。4作目まで作られたが、どうやってもこのドン・シーゲルの第1作には及ばなかった。

 思い出すのは、この映画でのイーストウッドのファッション。冒頭のビルの屋上プールでの射殺現場捜索シーンから、有名なホットドッグを食べながら拳銃ひとつで銀行強盗を取り押さえるところまでの服装が印象に残っている。グレーで肘当てが付いたジャケットの下が、えんじ色の毛糸のVネックの袖なしのセーター、それと鮮やかな赤いネクタイ。この服装のあと、茶色のセーターに茶色のジャケットというステイルを挟んで、身代金受け渡しのシーンではまた冒頭のスタイルに戻っている。当時、私はこのコーディネイトに影響されて同じ格好をしていた時期がある。これはのちに『ガルシアの首』のウォーレン・ウォーツの恰好を真似たのと同じ。今から考えると恥ずかしい思いがする。

 それとこの映画の魅力は何といっても、犯人スコルピオ役のアンディ・ロビンソンでしょ。こんな徹底した悪役って、ちょっと無い。このあとまたドン・シーゲルの『突破口!』にも出たが、そのうち消えてしまった感じ。この一作が強烈すぎたのだろうけれど、いい役者だった。

 とてもすっきりとした脚本で、ストーリーは単純。ここが大事だ。徹底した異常者の犯人と、その名の通りいささかダーティなヒーローとの闘いに絞ったところが素晴らしい。
 うまいなぁと思うのは、スコルピオンに乗っ取られた通学バスの行く手の道路の先、鉄道の高架線の上にハリーが立っているところ。走ってくるバスの屋根の上に飛び降りるわけだが、バスの前をのろのろ運転のワーゲンが、高架鉄橋の寸前で前に入り、バスのスピードが落ちて、ハリーが飛び乗りやすい状況になってしまうというところ。この細い工夫には感心させられた。

 久しぶり観たわけだが、サンフランシスコ・ベイブリッジの脇で少女の死体が全裸で見つかるシーン。公開当時はアンダー・ヘアの部分をフィルムにキズを付けて消していた。なんかチラチラして余計に猥褻になってしまって、観るに堪えなかったが、リバイバル公開から、この処理はなくなったそうで、今回も自然に観られた。今から考えると、ヘンな時代だった。

11月12日記

静かなお喋り 11月11日

静かなお喋り

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