風雲電影院

フルメタル・ジャケット(Full Metal Jacket)

2012年10月15日三日月座BaseKOMシネマ倶楽部にて

 スタンリー・キューブリック監督、1987年作品。

 日本公開は1988年。ロードショウで観た。とすると、これが25年ぶりくらいになるのか。

 上映時間は二時間弱。映画は二部に分かれていて、第一部が海兵隊の訓練の様子。ここだけで45分くらいあった。軍曹による、しごきの様子を描いたこの第一部の衝撃は今観ても凄い。

 字幕スーパーで観ているから、まだそれほどでもないが、一度吹き替え版で観てみたい。そっちの方が面白そうだ。なにしろ鬼軍曹の口から、汚い言葉が速射砲のように出てくる。
 一方で、新兵たちの答え方、「Sir,Yes,Sir」「Sir,No,Sir」の感じは英語のままでないと伝わって来ないだろうし。

 新兵たちの人格を否定するかのようなこの訓練は、解らないでもない。戦争とは生死を賭ける場。命令に背くような行為は、背いた人間だけでなく隊全体の生死を左右しかねない。

 そんな中で、落ちこぼれの新兵役のヴィンセント・ドノフリオは鬼気迫るものがある。この役のために35Kg太ったなんていうのは、只事ではない。だんだん狂気の世界に入っていく表情が怖い。同じキューブリックの『シャイニング』のジャック・ニコルソンの狂気よりも怖い。

 第二部はベトナムでの市街戦の様子が描かれる。それまで、案外ベトナムの市街戦の様子を描いた映画は少なくて、これを最初に観た当時は、「これぞまさに戦場だ」と興奮したのを憶えている。もっとも、そのあとに『プライベート・ライアン』だの、ソマリアでの『ブラック・ホーク・ダウン』だのが出てくると、これも色褪せてしまうのだが。

 第一部で、命令に背いた勝手な行動をしないように訓練を受けたはずの兵隊たちは、指揮官を失い、勝手な行動を取り始める。「ああ、危ない!」と観ていて思うのだが、戦場って、そんな冷静な判断も出来ない状態になってしまうんだろうという事も解らなくはない気になる。

 キューブリックにしては、この題材で二時間以内に収めたというのは不思議なくらい。この題材ならもう少し長いものを観たかったなと思う。

10月16日記

静かなお喋り 10月15日

静かなお喋り

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