風雲電影院

フューリー(Fury)

2015年5月7日
DVD

 戦車オタクを自認するUtamさんが公開前から大騒ぎしていた映画。私はあまり戦車というものに興味がないほうだったので、映画館での上映はスルーしてしまって、いまごろになってDVD日本語吹替えで観賞。いや、これは映画館で観るべきだった。名画座で上映していたら行きたい。これは凄い映画ですね、観終ってインターネットを見ていたら町田智浩さんがラジオで語ったことが、この映画のことをズバリと言いつくしているように思えた。以下にリンクを張っておこう。

町山智浩ブラッド・ピット主演戦争映画『ヒューリー』を語る

 もうこれを読んでもらえば、私が語ることなんてあまりないのだが、上のサイトでの発言と重複することだが書いておこうと思う。

 おそらくUtamさんも、戦車のプラモデルに夢中になった人の一人なんだと思う。私はどうだったかというと、そういえば一台か二台は作ったという記憶がある。戦車はねぇ、マブチモーターと電池で動くというのが魅力だった。しかもその動きがキャタピラでゆっくりと動くっていうところが面白かった。小学校の頃、戦車のプラモデル作りに夢中になっていたクラスメイトは多かったですよ。私の場合は途中で飽きちゃったんだと思う。

 子供心にも、戦争は嫌だと思いながらも、少年誌に第二次世界大戦に使用された兵器の数々が載っていると夢中になって見ているというのが、あのころの少年の私たち。まったく相反する気持ちながら、戦争というものに興味を持っていたんですなぁ。

 私の父は中国に戦争に行った。中国大陸をひたすら毎日毎日歩かされたと言っていたものだ。「戦車とか無かったの?」と訊いた事があって、そのときは「戦車なんてないさ」と言われたのを憶えている。今から思うに父に戦争の様子をもっと詳しく聞いておけばよかったと思うのだが、父はあまり中国でのことを語ろうとしなかった。今から思うと、話したくない記憶だったのかも知れないと思えてきた。それでも、若い頃は酔っぱらうとポツリポツリと断片的には話してくれたが、やはり胸の中だけに留めておこうとしたことの方が多いような気がする。

 戦争の真っ只中に置かれると、人はきれいごとでは済まなくなるのだろう。ドイツ戦線にシャーマン戦車で乗り込んだブラッド・ピットら。補充で入った新米の兵士は戦場体験の無い若造。彼が発砲をためらったために仲間の戦車が一台、乗組員もろとも破壊される。ブラッド・ピットはこの新米兵に無抵抗なドイツ兵を殺させる。こういうことって、絶対にどんな戦争でも行われてきたことだと思う。それはこの映画のようなアメリカ軍がドイツで行ったことも事実だろうし、日本軍だって太平洋戦争中に多かれ少なかれやったに違いない。

 このあと占拠した街でアメリカ兵が、女を見ればレイプしようとしているというショッキングなシーンになるのだが、それだって同じ。明日死ぬかもしれないと思っている兵隊に、そんなモラルだのなんだのあるわけないだろう。

 戦争に、正しい戦争も悪い戦争も無い。極限状況の中で理性を保っていくなんてできるわけない。どちらも傷つくのは現場の兵士。そして上陸された側の人民たち。たとえどんな理由があろうとも戦争はあってはならないものだと、この一見娯楽映画に見える作品は語っているように思う。

5月8日記

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