激戦 ハート・オブ・ファイト(Unbeatable 激戦) 2015年2月13日 新宿武蔵野館 ボクシングをテーマにした映画というのには、一定のパターンがあるような気がする。人生に負けてしまっている主人公が、何かを取り戻すためにボクシングの試合にかける。あの『ロッキー』しかり。マンガでいえば『明日のジョー』しかり。先月観た『百円の恋』もニートだったアラサー女性がボクシングを始める映画だった。観客の気持ちが高まるのは試合に向けトレーニングを積んで行く様子。そして肉体が引き締まって行く過程を目の当たりにして、役者って凄いなぁと驚かされる。自分もトレーニングしてみようかなんていう気にさせられたりして。 『激戦 ハート・オブ・ファイト』が面白いのは、この何かを克服しようとしている人間がひとりだけじゃないってとこ。ひとりはかつてのプロボクシング・チャンピオン、ファイ(ニック・チョン)。借金取りに追われてマカオへ逃げてきて、ボクシングジムの雑用係をしている。もうひとりは大会社の跡取り息子スーチー(エディ・ポン)。父の仕事を手伝わず各地を放浪しているうちに会社は倒産してしまう。スーチーはファイのいるジムに入門し、総合格闘技のチャンピオンを目指す。ファイもスーチーのトレーナーになる。そしてこの映画にはさらにもうひとり重要な人物がいる。ファイが下宿している家の未亡人クワン(メイ・ティン)。夫に捨てられて酒におぼれ、息子を失くしてしまった後悔から抜け出せないでいる。そして今は一人娘になってしまったシウタン(クリスタル・リー)。これはこの三人と、まだ幼い少女が、それぞれに失ったものから決別し、新たな物を手に入れようとする物語。いや〜、良く出来ている。 もちろん無理な部分はある。そもそもプロボクシングしかやってこなかったファイに総合格闘技のトレーナーが務まるのかというのはさておき、スーチーを総合格闘技の選手に育て上げたのはいいものの、スーチーがバックドロップを食らって病院送りになってしまったのをキッカケに、今度は自分が総合格闘技に参戦しようという展開。もう20年もボクシングの試合から離れている48歳の男が、総合格闘技の世界に入って行けるものかどうか。その辺が映画のウソというわけで、それを承知で観客は観て、興奮するというわけなんですけれどね。 そこのところをうまくカバーしているなと思うのは、やはりファイの闘い方はあくまでボクサーの闘い方だという描き方をしている点。そしてうまいのは、ボクサーとしてのバックドロップ封じの作戦。これには驚きました。その手があったのか。そして圧倒的劣勢からの大逆転のアイデア。伏線をうまく利用している。もっともあれは、実際にはありえないという気もするのだけど、それも映画のウソだと言えば納得できる範囲かもなぁ。 子役の使い方とか、もう見事な香港映画的な見せ方で引っ張っていく。あまりにもあざといという気がしないでもないけれど、う〜ん、これにはやられちゃいましたね。 2月15日記 静かなお喋り 2月13日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |