風雲電影院

グラン・トリノ(Gran Torino)

2015年4月12日
BS−TBS放映録画

 このところクリント・イーストウッドの映画がテレビで放映されると観ている。これは映画館で見落としてしまっていた一本。なんでこんなにいい映画を観ないまま、これまで来てしまったのか悔しい思いがした。日本語吹き替え版。吹き替え版に偏見は無いし、吹き替え版の長所もあるが、いつか日本語字幕版でも観てみたい。できたらスクリーンで。

 クリント・イーストウッドって、かっこいいや、やっぱり。もう監督に専念して、これが最後の出演作だと宣言したとかっていうけれど(さらに『人生の特等席』に出たりしてる)、この時点で70代後半。もうしっかり後期高齢者なのだけど、それをさらにメイクしたんじゃないかって容貌で現れて、役柄と言えば頑固な独居老人。所構わずツバを吐く汚い年寄りなんだけど、なぜかかっこいいんだ。

 この映画には、いろんなことが盛り込まれている。アメリカの自動車産業のこと、人種問題のこと、戦争のこと、いじめのこと。それらのことがこの一本の映画の中で語られ、一応の決着を見せる。この先もクリント・イーストウッドは80代になった今も映画を作り続けているが、これは今まで作って来た自分の映画へのオトシマエみたいなもので、この映画で決着をつけたかったんじゃないかというような気がする。

 クリント・イーストウッドといえばマカロニウエスタンで大きな転機を迎え、ハリウッドで『ダーティ・ハリー』シリーズなどでヒーローを演じ続けてきた。戦争映画にも出てナチスと戦った。でもそれだけでよかったんだろうかという思いがあったんじゃないだろうか。悪い奴は殺せばいい。それでやってきた。そして『グラン・トリノ』だ。朝鮮戦争でアジア人と戦い何人か殺した過去がある男。今ではそのことに悩まされる人生を過ごしている。そこに隣に越してきたアジア人。そこの息子はやはりアジア人のストリートギャングに虐められている。その息子を助けてあげれば報復がある。ならばとこちらも報復に出れば、また相手も報復してくる。これではいつまでたっても報復合戦だということに彼は気が付くのだ。これは世界の争いごと、戦争だって同じだ。そして彼の出した結論は一つだった。

 自分がよからぬ病にかかっていることも踏まえて、ストリートギャングのところに乗り込むクリント・イーストウッドは侍のように見える。許せないと思って悪いヤクザの事務所に乗り込む任侠ではなく、物事を解決しに行こうとする侍。その姿はまことに、かっこいい。いや、かっこよすぎだぜ!

 この映画こそアカデミー作品賞を取ってもおかしくないと私は思うのだが、映画会社の思惑からノミネートすらされなかったという話聞くと、アカデミー賞ってなんなんだと思ってしまう。きっとクリント・イーストウッド自身は、ほかの作品で作品賞も監督賞もすでに貰ってるからいいさ、くらいにしか考えていないのかもしれない。かっこいいぞ、クリント・イーストウッド!
 要は、この映画って、一番大事なのは、誇りを持てる人生ってことなんだな。

4月13日記

静かなお喋り 4月12日

静かなお喋り

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