風雲電影院

ブラッド・ウェポン(The Viral Factor 逆戦)

2012年12月30日
角川シネマ新宿

 ダンテ・ラム監督、ニコラス・ツェー、ジョイ・チョウ主演の今年香港で公開されたばかりの超大作らしい。それにしては日本ではあまり宣伝もされずに単館ロードショウとは、いささか寂しい扱いだが、そんな扱われ方もわからないではない。

 冒頭はヨルダン・ロケ。ここの戦闘シーンは音響もよく、怖いくらいの臨場感がある。ここで国際警察のジョン(ジョイ・チョウ)は頭部を撃たれ、余命二週間を宣告されてしまう。

 もちろん私は医学に詳しいわげてはない。が、脳の近くに弾丸が残り、余命二週間を宣告された男が、このあとも車こど転落してコンクリートの地面に叩き付けられてられようが、格闘をしようがまったく何事もないように動けるというのは信じられない設定なのだが。うーん、まあいいことにしますか。

 残された命をどうしようかと中国に戻ったジョンは、母親から、幼い時に別れた父親はまだ生きていて、ジョンにはヨウ(ニコラス・ツェー)という兄がいるということを知らされる。

 国際的テロ組織との闘いといったテーマに、余命いくばくかの男とか、兄弟の絆みたいなものを持ちむのは「なんだかなあ」と思うのだが、こういうの、香港あたりでは受けるんだろうね。

 ここで舞台はマレーシアに飛ぶ。マレーシアを舞台にした香港映画といえば、ジャッキー・チェンの『ポリス・ストーリー3』を思い出す。列車まで使って、けっこう自由にアクションを撮っていたから、映画撮影には協力的な国なのかもしれない。この映画もヘリコプターを使ったり、かなり大掛かりな撮影をしている。

 マレーシアでジョンは父親と再会する。そして自分の兄にも。父親と兄はテロ組織に加担していて、ジョンとは正反対の立場にある。

 超大作ということなので、上映時間も二時間越えになったのかも知れないが、これは香港映画としてはいささか長い。あの『ポリス・ストーリー3』だって96分なんだから。ウィルステロを行うために科学者を誘拐したり、研究所のウィリスを盗み出したりの話が大きな動き。これにふたりの兄弟や父親の話を盛り込みたいらしいのだが、とにかく忙しい映画でこの辺を描く時間の余裕は無く、どんどんアクションを積み重ねて行ってしまう。ヨウの娘が人質に取られたりして。もうあれよあれよという展開。アクションはよく出来ているのだが、めまぐるしすぎて、ついていけなくなってしまう。

 結果、バイキング・ブッフェ形式の食事を食べたようなもので、ローストビーフは外せないし、寿司も食べたい、エビチリも取って、オードブルにサンドイッチ、ハンバーグにスパゲティにサラダ、焼き鳥にたこ焼きにカニも乗せて、シユウマイや春巻きも少し、デザートにケーキに杏仁豆腐にどら焼きを食べるようもので、お腹はいっぱいにはなったけど、おいしい食事をしたという満足感とは別な気がする。

 ラストシーンで兄弟が水に浮いているシーンが印象的で、これが撮りたかったのかなと思うのだが、だったらそこまでにいろいろ兄弟が再会しての心の動きとか入れればよかったのにとも思うのだが、やっぱりいろいろ入れ過ぎちゃって時間がなくなっちゃったんだろうなぁ。

12月31日記

静かなお喋り 12月30日

静かなお喋り

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