風雲電影院

八甲田山

2015年1月12日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1977年作品。公開当時に観に行っている。それでももう38年前の映画。ほとんど忘れていた。

 忘れていたというのも、とにかく見ていて辛い映画だという印象しかなかったから。時は明治。八甲田山の雪中行軍訓練の話。ほとんど雪の中のシーンが続く。雪山のシーンはセット無し。すべてロケという過酷でとんでもない撮影。それが伝わってくる。これは寒かったろう。役者もスタッフも、よくぞやったというシーンの連続。しかも2時間50分という長尺。観ていて映画館の中だと言うのに、寒くなってきてしまったのを憶えている。

 いやもう寒い、辛いという感想しか、この映画に持てないで、二度と観たくないと思ったのを忘れていた。これでもう今度こそ二度と観ないだろう。

 とにかく雪山のシーンはすべてロケにしちっゃたものだから迫力はあるものの、何が映っているのかよくわからないシーンも多い。しかも役者に至っては顔がよくわからない。みんな同じ服を着ているし顔までほとんど覆っているので誰なのかわからない。何も本人が立ってなくてもスタントで十分。本人である意味がわからない。それでもこれは豪華キャスト。主演の高倉健、北大路欣也以外にもたくさんの有名な役者が出ている。オープニングで出るキャストのクレジットは実はほんの一部。エンドクレジットでたくさんのキャストが一気に凄く速いスピードで流れていく。「えっ! この人どこに出ていたの」と思うはじから、「えっ! この人も出ていたのか」「あっ、この人も」。こんなスピードでクレジットを流されちゃあ役者さんも堪んないだろう。この映画は役者ではなく雪山なんだってことなんですかね。

 明治時代に実際にあった、軍隊の雪中訓練の遭難事故を題材にしたもので、多分に創作の部分もあるのだろうが、それにしても無謀だとしか思えない。彼らはいわば実験のモルモットにされたようなもの。こんなものに参加させられたんでは堪んないね。そしてそれに輪をかけて、威張ってばかりで無能な上官。これなんて今の社会でも同じ。会社でもこんな上司いるものね。部下は堪ったもんじゃない。なんだかこの映画観ていると、もともとこの訓練を企画した軍部のお偉いさんが政治家。実際に舞台を率いて、間違った判断を繰り返したのが会社の無能な上司に思えてきて、観ていてうんざりしてきてしまう。こりゃ寒いぞという風景も耐えられないけれど、こういう無茶なことやらせる奴らの姿を長時間見せられるのも嫌。高倉健主演だから任侠映画のように、最後に無茶なことやらせた奴のところに殴り込みとして欲しかったと思ったりして。アハハハハ、そんなわけにはいかないか。

 しかしこの映画の健さん、いいですなぁ。実に男らしい。この映画の次に出たのが『幸福の黄色いハンカチ』。ここから男らしい健さんから、いい人の健さんへのイメージの移行が始まってしまったわけで、この『八甲田山』こそ、私ら、東映映画の健さんに夢中になっていた連中の思い描く健さんの最期の作品になってしまったわけです。

1月13日記

静かなお喋り 1月12日

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