ハイヒールの男 2015年5月28日 キネカ大森 2014年、韓国映画。 オープニングが、実にカッコいい。薄暗い館にやってくる一人の男。韓国の個性派俳優チャ・スンウォン。手には拳銃。女がささやく。「中には、その拳銃の弾丸以上の人間がいるわよ」。それでも部屋に入って行くスンウォン。奥にはボスらしい男が座っていて、周りには十数人の男たちがいる。スンウォンは男に拳銃を向けるが、男の口からは先ほど女から言われたと同じようなことが告げられる。と、スンウォンは突然、拳銃をテーブルに投げつけると、男たちの中心に突進する。カンフーだかテコンタドーだか、とにかく切れ味のよい技で、男たちをすべて倒してしまう。 スンウォン演じるは刑事。身体は格闘技で鍛え抜かれ、無駄な脂肪は一切ついていない。完璧な肉体を持った男で、仲間からはサイボーグと呼ばれている。 「おおっ、これは、これから硬派な肉体アクション映画が観られるぞ」と期待したら、話は変な方向に向かって動き出す。この刑事はいきなり退職したいと言いだす。表向きはいろいろと言うのだが、実は彼は女に性転換したいと昔から思っていた! って、これは驚きでしょ。筋肉ムキムキの硬い筋肉質の男が女になりたいって、これは映画史上でも、おそらく今までになかったプロットでしょ。自分が女になりたいと思っている気持ちを封じ込めるために、今まで逆に身体を鍛えてきたって、無理があると思うけれどなぁ。そこの説得力さえあれば面白く観られたというアイデアだと思うのだけどねぇ。あるいは思いっきりコメディにしてしまうとかね。ところがこれ、マジなんだもの。それをまた二時間も見せられるというのは、ちょっと辛かったですね。 いきなりDVDになってしまうところを、『未体験ゾーンの映画たち』に救われて短期間ロードショーされて、さらにキネカ大森での上映になったけれど、いきなりDVD扱いのわけもわかるような気がする、ちょっと残念な映画。 5月29日記 静かなお喋り 5月28日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |