ヒッチコック(Hitchcock) 2013年4月17日 TOHOシネマズシャンテ 観終ってから、この映画の監督が『アンヴィル!〜夢を諦めきれない男たち〜』を撮った人だと知った。サーシャ・ガヴァン。憶えとかなくちゃ。『アンヴィル!〜夢を諦めきれない男たち〜』はカナダのヘビーメタル・バンドを追いかけたドキュメンリー。いまいちメジャーになれないバンドが、それでもメジャーになろうとして葛藤している様を描いている。私はこの映画がすっかり気に入ってしまったのだが、この映画に関しては公開当時にすでに書いた。 風雲電影院 アンヴィル!〜夢を諦めきれない男たち〜 『ヒッチコック』は、『サイコ』撮影当時のヒッチコック秘話。『サイコ』に乗り気でない映画会社とヒッチコックとのやり取り、ヒッチコックとその妻とのいざこざが描かれる。 『アンヴィル〜夢を諦められない男たち〜』と似ているのは、創作を通しての、それを取り巻く人間との軋轢。何人かの人間が協力しあって作品を作り上げるには、それなりのぶつかり合いがあるというところ。さらにそれに金の問題が絡んでくるのも同じ。ただ、ヒッチコックはすでにしてメジャー監督。プール付の邸宅に住んでいる。アンヴィルはメジャーには程遠くて、アルバイトをして食っている。 ヒッチコック役はアンソニー・ホプキンス。どこかコミカルな風貌と言動で売ったアルフレッド・ヒッチコックだが、知られざる異様な一面の姿を描く映画だから打って付け。どこかハンニバル・レクターが入っている。こわ! 世間に向けてのイメージと実際の性格にはやはり差があったようで、知りたくなかったという気がするのと、ヒッチコックも普通の人間だったという気持ちが錯綜する。人間やはり嫉妬心からは抜けられないんだろうね。アル中ぎみなのと過食症で冷蔵庫の中の物をガツガツ食うシーンは鬼気迫るものがある。 アンソニー・パーキンスの役をやったジェームズ・ダーシーは、よく似ている。アンソニー・パーキンスは二面性を持った役者ということで配役が決まるのだが、これでイメージが固定されてしまったのか、その後『サイコ』のトラウマから逃れられなかった気がする。かわいそうなことをしたなぁ。 『サイコ』はヒッチコックが60歳のときに作った映画だそうで、周りから「いつ引退するんだ」と言われている様子が描かれる。映画作りなんかは高齢になった監督が傑作を作るケースも多いから、あまり年齢は関係ないのだろうが、周りの目はそうは見ないというのは悲劇だ。このころは世間一般では、今よりも定年になって引退する年齢が下だった時期で、55歳定年なんて言われていたもんだ。改めてフィルモグラフィーを見てみると、ヒッチコックが不運だったのは、作家としてのピークがこのころに来てしまったことだろう。『サイコ』は1960年。『知りすぎていた男』と『間違えられた男』が1956年。『めまい』が1958年。『北北西に進路を取れ』が1959年。そして『サイコ』の次の『鳥』が1963年なのだ。代表作のほとんどがこの時期に集中してしまっている。 それにしても思うのは、映画監督って女にモテるんだなってこと。ハゲデブチビのヒッチコックでも、どうやらモテたらしくて。やはりどうせやるなら映画監督なんでしょうな。 4月18日記 静かなお喋り 4月17日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |