ハッスル&フロウ(Hustle & Flow) 2015年8月1日 DVD 今回は最後までストーリーを書いてしまいます。ネタバレが嫌いな人には向いていないと思います。ご注意を。 2005年にひっそりと公開された映画だが、日本では10年も経った最近になって再評価が高まっているらしい。 というわけで私も観てみたんだけれど、いや〜、これは実にやるせない映画ですね。もうアメリカの黒人社会の底辺というものを見せられてしまって、グッタリしてしまった。 メンフィスの街でポン引きをやっている男が主人公。何人かの売春婦を抱えていて、車を街角に停め、車でやってくる男に声をかけて女を紹介して相手の車に女を送り込む。そんなクズみたいな生活をしているけれど、彼には夢がある。それはラッパーになること。 そんなある日、街にラッパーとして成功した男が帰ってくるという情報を聞きつけ、デモテープを作って彼に渡して、ラッパーとしてデビューしようと思いつく。 そこで仲間でプロデューサーを買って出た男と、録音エンジニアをやってくれる白人青年と一緒にデモテープ作りを始める。これがなかなかいい曲。私はラップというものを好きになれないのだが、この曲は別。一度聴いたら忘れられなくなるくらい。それもそのはず、この曲 It's Hard Out Here for a Pimp はアカデミー最優秀歌曲賞を取ったんだそうで、この曲を聴けただけでも、この映画を観た価値はあった。 曲を作って行くうちに、女性コーラスを入れたら面白いということに気が付いて、売春婦に歌わせると、これがうまくハマって、ますますいい曲に仕上がって行く。売春婦のなかに一人だけ白人がいて、「私にも手伝わせて」と言うが、「うるせえ、お前はひっこんでろ」と相手にしない。ところがここでもうひとつ問題が起こる。録音マイクが安物でいい音が録れない。もっといいマイクが欲しくなる。しかしそんな金なんてない。そこで録音機材を扱っている店の親父に白人の売春婦をあてがって、代わりにマイクを手に入れる。するとこの売春婦が怒り出す。「あたしを何だと思ってるのよ!」。売春婦にも売春婦の意地があるっていうこのシーン、よかったなぁ。この白人の売春婦を演じたのはタリス・マニングという女優さん。憶えておこう。 ようやくデモテープは完成。それでいよいよ大物ラッパーにデモテープを渡すために会いに行くわけなのだけれど、このラッパー自身が、とんでもないクズ野郎だったっていう話。 もうね、アメリカ社会で黒人に生まれただけでもハンデなのに、まともな職業にも就けなくて、ラッパーになって今の生活から脱出しようとしたら、出逢った相手が、その上を行くクズ野郎だったって、いったいどうしたらいいんだという気になってしまう。 せめての救いがラストで、彼の作った曲を白人の売春婦がラジオ局に持ち込んで大ヒットするという結末が待っていることくらいかな。 どうも私はラップを毛嫌いしていたのかもしれない。ほとんどのラップには拒否反応をしてしまうが、この映画の主題歌になったラップは、「いいなあ」と思ったもの。 8月2日記 静かなお喋り 8月1日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |