風雲電影院

いけちゃんとぼく

2016年8月29日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 西原理恵子の絵本を原作にした、2009年の作品。リエゾウ先生の世界は、あの独特の絵とテンポであり、実写には向かないと思っていたのだが、これ、確かに無理があるよなぁと思うところもあったが、どうしてどうして、よく出来ている作品。主人公は子供だし、ヘタすると、どっちらけになりかねないところ、この子役、いいねぇ。あとから知ったら監督の大岡俊彦という人、クレラップのCMなんかも撮っている人だと知り、さすが子供の使い方が上手いと納得した。

 西原理恵子の原作だから、ア舞台は高知の漁師町。主人公の少年ヨシオには彼にしか見えない不思議な生物が見える。いつも彼の行動をジッと見守っていているだけの生物だが、話もできる。彼はその生物に、いけちゃんと名付けているのだが・・・。
 ヨシオには天敵のいじめっ子コンビがいて、いつも殴られている。これは、いけちゃんが、いじめに対抗する助けをしてくれる映画かと思うと、そういうわけでもない。いけちゃんは、ただ黙って見ているだけ。ヨシオは空手を習おうとしたり,味方を付けて数で対抗しようとしたりするが、ことごとく失敗する。

 どの時代、どの場所にも、いじめは存在する。まだ小さな小学生の間でも、いじめはある。私が小学生の頃にも、いじめはあった。しかしそれを乗り越えて行くのが子供たちの社会。嫌な奴らだなと思いながら、なんとか生き抜いてたものだ。もちろん今のいじめは、もっと陰湿なのかもしれないが。

 ヨシオは、隣町に出掛けた時に、その地元にもいじめっ子が存在するのを知って、いじめっ子は何処に行ってもいるんだと悟る。そしてある日、大きな転機が訪れる。隣町のいじめっ子集団が、自分たちの町に乗り込んでくるのだ。ここでヨシオの取った行動とは・・・。それはいささかデキすぎという感じではあるのだが、すべてを解決することになるものだった。
 そのことをキッカケに、いけちゃんはヨシオの元を去って行ってしまう。まるでヨシオが自立したのを見届けたかのように。

 いけちゃんの正体は、このあとに明らかになるのだが、それがいかにもリエゾウ先生と言えども、やはり女性の考えることなんだなと思わせる。その部分は賛否ありそうだけれど、少年の成長物語として、なんとも清々しい気持ちになる映画。おしさんになった元少年と、子を持った母親なら、きっと感じることが多いと思う。

8月30日記

静かなお喋り 8月29日

静かなお喋り

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