風雲電影院

インファナル・アフェア 無間序曲(Infernal Affairs U 無間道U)

2016年3月28日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 これも香港盤DVDを買って、一足早く観た。一作目の脚本が奇跡的によくできていたので、続編ともなると、あまり期待していなかったのだが、観終わってみると、これまた奇跡的によくできていたので、びっくりしたのを憶えている。どちらかというと、私はこの二作目の方が好きかも知れない。

 ちなみにこれもベルリンさんがよく整理してくれているので、そちらを参考にしていただくといいでしょう。

 冒頭のシーンからラストシーンまで、無駄なシーンは何一つない。こんな完璧なシナリオは、そうそうできるものではないと思う。
 冒頭シーンは警察署内。ウォン(アンソニー・ウォン)が煙草を吹かしながら、メシを食べているサム(エリック・ツェン)に話をする。昔、出遭った事件でマフィアの男を撃ち殺せなかったというエピソードを語っているのだが、それはどうやら目の前にいるサムのことらしいというのがうかがえる。このなんとも不思議なプロローグで、観る者の気持ちを掴むというのは素晴らしい。
 一方でラストシーン。警官でありマフィアのイヌであるラウ(エディソン・チャン)が酔っ払いの女性を保護している。名前を訊くと、マリーだと答える。このマリーと言う名前は、カリーナ・ラウ演じたサムの妻でもあり、ラウがひそかに慕っていた女性の名前。しかもラウは、このあと第一作でマリーという名前の女性と結婚することになっていく。この酔っ払いかどうかはわからないが・・・。

 一作目がヒットして二作目を作ろうとしたとき、一作目より前の話にするといった構成もあって、アンディ・ラウとトニー・レオンが使えない。しかしふたりの若き日を演じるエディソン・チャンとショーン・ユーでは、スター性もなければ、演技力も期待できない。それでまず、二作目の話はウォン刑事とサムの話にしようと決めたのではないだろうか。そして見事にこのふたりの役者、アンソニー・ウォンとニコラス・ツェンは、その期待に応えたといっていいだろう。

 すごいと思うのは、誰もオーバーな演技をしていないことだ。アンソニー・ウォンもニコラス・ツェンも抑えた演技をしているくせに、しっかり存在感を出している。ニコラス・ツェンなどは、もともとコメディアンだから、もっと派手な芝居をしたがるのかと思ったら、一作目より抑えた演技。この人の実力ってあなどれないなと思う。
 ほかにも、ハウ役のニコラス・ン(ン・ジャンユー)。もっとキレまくる演技をする人かと思ったら、実に静かな口調でインテリ・マフィアを演じている。あの『ザ・ミッション 非情の掟』でも、ただいるだけで存在感のあったロイ・チェンも、ひとことも台詞がないにもかかわらず静かに目立っているし、キョン役のチャップマン・トーも体重を10kg落として、いい顔になっている。この人もどちらかといえばコメディの人だが、これだけの芝居ができるとは。しかし何といってもこの映画で光っているのはカリーナ・ラウ。サムの奥さんだが、ウォン刑事ともデキていた上、先代ボス殺害に関与した張本人。実際に手を下したラウ刑事にも慕われてしまうという、とても難しい役をこなしている。

 完璧な脚本と、役者の素晴らしい演技でもって、これは傑作となった。二匹目のドジョウはいたのである。
 のちのハリウッドリメイクでは、この二作目は映画化されなかったが、これは香港でこそ撮れた映画であり、ハリウッドでは、こういうのは無理だったんだろうなぁ。

3月29日記

静かなお喋り 3月28日

静かなお喋り

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