風雲電影院

仁義なき戦い・代理戦争

2015年1月26日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1973年の作品。何回か観ているが、最初観たときには、なにがなんだかさっぱりわからなかったが、観終って、やたら面白く思えて、しかもこれはかなりヤバい話を映画化した実録ものだよなと感じた。おそらく『仁義なき戦い』シリーズの中では一番取っ付きにくい。ヤクザ社会で実際にあった事実を並べることに主眼が置かれていて、前の『仁義なき戦い』や『仁義なき戦い・広島死闘篇』にみられたような、一種の青春映画のような物語がほとんど出てこない。あるとすれば川谷拓三が演じた西条勝治と富枝(池玲子)のエピソード。そして渡瀬恒彦の演じた倉元猛のエピソードだろう。あとはもうまさに群像劇。今観ても出ている役者が全員、役にのめり込んでいて、凄い濃い演技をしているのがわかる。もう大物俳優から端役に至るまで、一丸となって乗りに乗っているなという雰囲気が伝わってくる。

 いや〜、実際この『代理戦争』はシリーズでも一番ヤバい部分のところだったはず。モデルはちゃんといるんだし、それが誰だかは観る人が観れば一目瞭然。ヤクザばかりじゃない。ヤクザ社会と興行の世界は昔っから密接な関係があり、大前均の演じたプロレスラーのモデルは力道山だという説もある。もう死んじゃってからどうってことないのだけどね。某国民的女性歌手が組長らと撮った写真というのも現存していて、この映画が撮られたときにはまだ生きていたから、そのことには触れられなかったけれど、あの時点で死んでいたら、そのことも盛り込んだんじゃないかというくらいヤバい勢いがある。

 この映画観たの何回目だろう? と言っても間隔を置かずに何回も観たわけではないから、観るたびに何事が起きているのか頭の中が混乱するくらいに解り難い話だ。それでも妙な熱気で引きずり込まれてしまう。公開当時、私は学生で、仲間たちはみんなこの映画のおかげで広島弁、それもヤクザの使う広島弁に夢中になっていた。「こん、くされ外道が」「「ケツ持ってくれるんかいのう」なんて言葉を日常で使って喜んでいた。凄い影響力を持った映画だった。

 スタジオではドンとカメラを据えた撮影。それも背景はほとんど映さず画面に人間だけをギッシリ詰め込む。あるいは人物のアップ。一方でロケでは手持ちカメラのやたらと揺れる映像。アクションシーンでは、カメラを斜めにするカットが多用される。しかもほとんどゲリラロケだったそうで普通の通行人がびっくりしている映像が、そのまま使われている。

 これはあのときの東映という会社だから出来た映画。とんでもなくヤバい映画を勢いで作り上げてしまったとしか言いようがない。

 この映画で一番得をした役は、やはり渡瀬恒彦だろう。またこのとき、実にいい芝居をしている。

 それがまた衝撃のラストシーンに繋がる。倉元猛(渡瀬恒彦)の葬儀の直後、襲撃をくらい、骨壺の入った箱が道路に落ち、遺骨が散乱してしまう。泣き崩れる母親。まだ熱い骨を掴んで握りつぶす広能(菅原文太)。そこに広島原爆ドームが映し出され、強烈なナレーションが静かに被さる。「戦いが始まるとき、まず失われるのは若者の命である。そしてその死が報われたためしはない」。ここまでヤクザ社会の裏側を語っていたはずのことが、いきなり国家に向けられる。この、あっという展開には愕然とさせられるものがある。

1月28日記

静かなお喋り 1月26日

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