風雲電影院

ジュニア・ボナー 華麗なる挑戦(Junior Bonner)

2015年3月16日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1972年、サム・ペキンパー監督、スティーブ・マックイーン主演作品。このすぐあと同じ年に同じコンビで『ゲッタウェイ』が作られている。

 バイオレンス映画の監督として知られるサム・ペキンパーだから、公開当時、そういうものを期待して観に行ってがっかりして帰って来たことを憶えている。ロデオなんていうものに関心がある日本人なんてどれだけいるだろうか? 私もさっぱり興味なし。流れる音楽はカントリー&ウエスタン。私、たいていの音楽は好きだが、ことカントリー&ウエスタンに関してだけは、まったく面白さがわからない。おそらくアクビしながら、この映画を観ていたんだろう。

 今回40年ぶりくらいに観返してみて、やはりサム・ペキンパーのいつものバイオレンス面を期待するとガッカリする映画だと感じた。拳銃ドンパチも無い、誰も死なない。しかしこれ、『荒野の流れ者』などにも通じる、滅びゆくアメリカの開拓者精神に逆らおうとする男の物語だ。おそらくロデオ大会なんて、今やアメリカでも絶滅に近いような気がするし、この映画が作られた時点でも、もう衰退し始めていたのではないか思われる。

 各地で行われているロデオ大会に出場して賞金を稼いで生活しているジュニア・ボナーが、故郷で開催されるロデオ大会に参加するために戻ってくる。父親は還暦を迎えているというのに、いまだに毎年ロデオ大会に出場し続けている上、根っからの山師で、銀の採掘で大儲けをしようとして失敗。それでも懲りずに今度はオーストラリアで一山当てようかと考えている。まあ開拓者精神の生き残りですな。ジュニア・ボナーにはお兄ちゃんがいて、こちらはさっぱりロデオには興味が無い代わりに商才に長けていて、事業で大儲けしている。失われ行くアメリカと近代化のアメリカっていう、サム・ペキンパーお得意の構図。

 ジュニア・ボナーの目的は最強の暴れ牛サンライズに乗って勝つこと。誰がどの牛に当たるかは抽選によるのだが、裏から手を廻してサンライズに乗れるようにする。あまり金のない彼だが、「金じゃないんだ」。四日前にもサンライズに乗って乗りこなせなかった屈辱を晴らそうというもの。男だねぇ。

 女にも目が無いジュニア・ボナー。酒場で金持ちらしい男の傍にいた美女を踊りに誘いひと悶着。酒場は突然西部劇の酒場の乱闘状態。女は金持ちより、イケメンで男らしい男を選ぶのかねぇ。

 ジュニア・ボナーは大会で優勝。流れ者には女はいらないと去っていく。お父さんにはオーストラリア行きの片道チケットを送る。旅行社の人に「エコノミーにしますかファーストクラスにしますか?」と訊かれてしばし考え、「ファーストクラス、それと犬(アニマル)一匹の運賃も」

 マックイーン、カッコいいぜ!

 観直してみると、これ、いいじゃん。それだけ私が齢を取ったという事なのかもしれないけど。

3月17日記

静かなお喋り 3月16日

静かなお喋り

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