風雲電影院

ジャコ萬と鉄

2015年1月19日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 黒澤明脚本、谷口千吉監督の作品をリメイクした1964年作品。私は元になった映画も、このリメイクも未見だった。

 主演高倉健。監督は深作欣二。当時の東映の映画館向けの資料には、「新進気鋭の深作欣二監督」と書いてある。このころまだ三十代前半の若さ。高倉健も深作欣二と同じ年頃だったはず。俳優デビューはずっと前だが、このあたりから役者としての知名度が上がりだしたころかも知れない。翌年に『網走番外地』が公開されて、そこから一気に売れっ子になったのだが、この『ジャコ萬と鉄』には妙に『網走番外地』との共通性が感じられる。何といっても、舞台が北海道だということ。不思議と高倉健には北海道とか寒い地方が似合う。この後のしがらみを背負った東映任侠映画の主人公でもなく、かといって、さらに後の“いい人”健さんでもない。若くてどこか無鉄砲で魅力的な男がいる。おそらく石井輝男は、この鉄というキャラクターを念頭に置いて、『網走番外地』の橘真一を作り上げたのだろうと思わせる。リーダーシップを発揮してニシン漁に雇われた仲間と一緒に、賃金交渉をするなんていうのは時代を感じるが、その仲間たちと宴会が始まり、南国の土●に習ったという、いい加減っぽい踊りからソーラン節になだれ込むなんていう姿も、『網走番外地』っぽい。こんな健さんの姿が見られるのは、このころだけ。ジャコ萬(丹波哲郎)に惚れて、どこまでも追いかけてきてしまうユキ(高千穂ひづる)をジャコ萬が橇に縛り付けて、馬に引かせて暴走させたのを鉄が止めるなんていうシーンも、まさに『網走番外地』に出てきそう。それにしてもあの寒い海に裸で飛び込んでいた健さんは、やはり若かったんだなぁ。

 深作欣二らしいなぁと思うのは、何と言っても大勢の漁師が小屋に集まって相談したりするシーン。雇い主の九兵衛(山形勲、好演!)がいわば、もともと狸みたいなやつで、『仁義なき戦い』で言えば山守(金子信雄)を思わせる存在。このシネスコ横長画面にギッシリと人間の顔を埋め込んだ構図は、「このころから、こういうの好きだったんだね」と思わせる。

 ニシン漁のシーンは、既存のフィルムを挿入したのかもしれない。顔がほとんど映ってないし。今年、私が初めて観た映画は『リヴァイアサン』という現代の底引き網記漁船のドキュメンタリーだったが、あの雑な漁法に比べて、なんとも優雅なものではないか。こんなんでどれだけニシンが獲れたことやら。

 昔の映画ということもあって、ラストは八方丸く治まり大団円。って都合いいような気もするが、これ、ようするに昔の西部劇なんだね。もう男の世界そのまま。そんな中で江原真二郎が、いい役で出ている。若い時はこんな役もやってたんだ。

1月21日記

静かなお喋り 1月19日

静かなお喋り

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