風雲電影院

カラスの親指

2012年12月2日
楽天地シネマズ錦糸町

 道尾秀介の小説の映画化。

 原作は読んでいないが、一種のコンゲーム小説。詐欺師の話で映画全体に仕掛けがほどこしてあると知って、なるべく紹介記事などには目を通さないようにして出かけた。

 序盤の競馬場での詐欺のシーンは、なんのことなく仕掛けに気が付いたが、そのあとから続く展開は、結構騙された。

 なんのことないシーンでの伏線があとあとになって効いてきて、「ああ、あのときのあれ」と思うシーンが仕込まれていた。

 特に、すべてが終わったと見せてからのエピローグに当たる部分の種明かしは完全に騙された感じ。
 ただ、それらは原作がそうなっているからだろうから、原作の力だろう。

 問題なのは、この映画、妙にテンポが悪い気がするのだ。闇金屋から金を騙し取ろうと集まる五人にどうも思い入れが入って行かない。いかにも作られたキャラクターに感じてしまう。特に村上ショージは役者ではないとはいえ、あまりにも実在感がなさすぎる。石原さとみも能年玲奈も小柳友も演技が浮いてしまっている感じがする。唯一実在感があるのは阿部寛なのだが、せっかくの演技がほかの人に引っ張られてしまっているようで可哀そうだし、映画自体に弾んでいくようなテンポが感じられないのだ。

 一番問題なのが、クライマックスともいうべき、闇金の事務所から大金を騙し取るシーン。なんだか緊迫感が無い。観客を焦らすサスペンスになるべきところが、どうも間延びしたような感じになってしまっている。仲間のひとりが紙袋に入った札束を持って室外に逃げるという重要なところでも、なんだかモタモタした印象。ここは、すぐに闇金の連中が追いかけてこなければいけないのに、闇金業者はしばらく室内で何してたの?

 やっぱり編集の問題なのかなぁ、このテンポの悪さは。

 大どんでん返しになるエピローグの部分も長すぎ。小説ならこれでもいいだろうが、映画ではこの長い種明かしはダレてしまう。

 こちらの期待度が高すぎたのかもしれないが、やっぱり160分は長いよ。

12月4日記

静かなお喋り 12月2日

静かなお喋り

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