風雲電影院

乾いた花

2016年6月20日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 大島渚、篠田正浩、吉田喜重の、いわゆる松竹ヌーヴェルバーグって苦手で、ほとんど観なかった。なんだかさっぱりわかんないというのがその理由で、何本か観たものでも、ほとんど寝てしまっていた。それが今になってようやく信田正浩の『乾いた花』を観たわけだが、これは確かに傑作だ。

 18禁になっているが、当時、加賀まりこのヌードでも期待して観に行っていたらばガッカリしただろう。裸のシーンは無いし、セックスシーンも無い。一ヶ所だけ池部良と加賀まりこが布団のなかに入るシーンがあるが、なんとセックスをしないのだ。おいおい、ここは話の流れからヤルだろというシーンなのだがヤラない。ヤレよ!(笑)。

 驚いたことに、この映画ってヤクザ映画なんだね。池部良のヤクザ村木が、組長命令で敵対する組織のひとりを殺して懲役をくらう。出所してみれば、敵対していたはずの組織とは手打ちをして、組長同士は仲良くなってるという、最初っから理不尽な設定。これは最後に池部良が親分に反旗を翻すって話だろうと思っていると、そうはならない。

 ある日、村木は賭場で、場に似つかわしくないような女、冴子(加賀まりこ)に出遭う。もっとレートの高い賭場はないのかと持ち掛けられて^別の賭場に案内すると、無茶な張り方をする。冴子の運転する車に乗ると、首都高サーキット始める、果てはクスリにも興味を示しだす。あまりにも無軌道な女なのだが、村木は掟でがんじがらめになっている自分とは正反対の冴子の存在が気になって仕方ない。やがてまた別の組織の者を殺せとの命令が下され、村木は成り行きでこの役目を引き受けることになる。

 東映で任侠路線が確立する前の1964年作品。東映だったら、最後に殴り込みがあるところだが、これは松竹。しかも文芸路線。そうはならないところが、面白いというか物足りないというか。

 賭場でマエサキ賭博のシーンのあとに手本引きのシーンがある。というか正しくは花札を使った手本引きだから、絵本引きってやつ。私は一度だけ手本引きをやったことがあるが、張り方が複雑で、いまだによくわからない。この映画では張る手元を映さないのでイマイチ勝負の動きがわかりにくい。まあ、そんなものどうでもいいだろうけど。主題は賭場ではなく、冴子という女の生き方と村木の生き方の対比なんだから。

 原作は石原慎太郎。私は一冊も読んだことがないが、あのころの石原慎太郎は、『太陽の季節』といい、この『乾いた花』といい、自由奔放な生き方を描いた作家だったんだね。後の政治家になってからの言動とは、ちょっとイメージが違うような気がするのだけれど。

6月21日記

静かなお喋り 6月20日

静かなお喋り

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