希望のかなた 2018年1月24日 ユーロスペース アキ・カウリスマキの映画を最初に観たのは3年ほど前で、それまではなんだか食わず嫌いのようなところがあって観なかった。おそらく私の苦手な小津安二郎の影響があると聞いたことも、その理由だった気がする。それがたまたまDVDで観る機会があって、それからもうすっかりハマってしまって、次々とDVDを観た。おそらく短期間のうちに代表作と言われる初期のものは、ほとんど観たと思う。しかしスクリーンで観るのは、これが初めて。 これがもう、アキ・カウリスマキ、まったく変わってない。もう頑固なのか、自分の映画の撮り方をまったく変える気は無さそうだ。 台詞は少ない。役者にはあまり大きな演技をさせない。淡々と映画は進んで行く。 例によって主人公は社会的弱者。今回はフィンランドに流れ着いたシリア難民の男。それを匿うのは不器用なレストラン経営者。これがよしゃあいいのにスシ店まで出して大失敗。スシの作り方もほとんどド素人ぞろいのスタッフで、かなりいい加減なスシを出す。あれじゃあ流行るわけない。お客さんも文句も言わずゾロゾロと出て行くシーンが可笑しい。 アキ・カウリスマキといえば音楽。今回も私の知らないブルース・ミュージシャンの演奏風景が挟まったり、バックで流れる音楽のセンスは抜群。そんななか、このスシレストランで流れるのは『竹田の子守歌』と、私の知らない『星をみつめて』という日本語の暗〜い歌。思わずわず笑ってしまったけれど、この曲をスシレストランのBGMに使っていたとしたら、まさに店が流行るわけがない。食事中にこんな曲聴かされたら、寂しくなって食欲も落ちるよな〜。 とにかくアキ・カウリスマキの映画の人物は喜怒哀楽をほとんど顔に出さない。主人公のふたりもそうだし、店の従業員仲間、難民審査官なども、ほとんど無表情。シリアから逃れてきた男には、混乱で別れ別れになった妹がいて、ようやくふたりは逢えることになるが、ふたりとも喜んでいる演技も悲しんでいる演技もない。 そして、このシリア難民の兄に、このあと悲劇が降りかかることになるが、それも冷めた目で描かれる。 この辺が、アキ・カウリスマキを好きか嫌いかはっきり分かれてしまうところ。難民という社会的に重いテーマだと、どこかふざけたシーンと、シリアスなシーンのギッャプについてこられない人も多いかもな〜。 1月25日記 静かなお喋り 1月24日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |