風雲電影院

もういちど殺して(Kill Me Again)

2013年8月19日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1989年作品。日本公開は1991年だったそうで、この年の手帳が見当たらなくなってしまっているのだが、確かにこの年の初め、正月映画が終った頃にひっそりと公開されて、私も期待しないで歌舞伎町の映画館に観に行って、これ面白いじゃないかと思ったのを憶えている。もっとも、今観直してみると憶えていたのは最後のところだけ。現金が入っているスーツケースのくだり。ここは良くできていると当時も思った。

 主演がヴァル・キルマー。ジム・モリソン役をやったオリバー・ストーンの『ドアーズ』が公開される前で、私はまるで知らない役者だった。相手役のジョアン・ウォーリーもまったく知らなくて、今観ると、ほんといい女。でも役の上では、とんでもない悪女。この映画を無理にジャンル別けするとすれば、これは悪女ものでしょ。

 出だしは典型的な、しがないハードボイルド私立探偵もの。いや、ちっともハードボイルドじゃないんだけど。ヴァル・キルマー演じる探偵さんは、まるで腕っぷしは弱いしタフガイとは程遠い。あとでわかってくることだが過去に奥さんを事故で亡くして、そのことを後悔している。金が無いところも探偵ものの常道だが、タチの悪い高利貸しから借金して返済を迫られている。そんなところへ、これまたヤバいところから大金を奪った男からさらにそれを奪って逃げている女に、自分が死んだように工作してくれという依頼。探偵さんは自分の過去の経験から、交通事故に見せかけて、女の死んだように見せかける計画を思いつく。

 ところが女は前金だけ払ってトン面。とことん悪い女なんだよね。それでも見つけ出してたはいいものの、「もういちど殺して」。つまりもう一度死んだように見せかけてくれという虫のいい話。それでも悪女にぞっこんになっていってしまうわけで・・・。

 おいおい、魅力的だけど、こんな女に関わると碌なことないぞと思っていると、ラストはそうくるか。ちょっと気持ちいいのだけど、そのあとのクレジットタイトルにに流れるのが『煙が目に沁みる』Smoke Gets In Your Eyes
 恋の炎が消えるとき、煙が目に染みて涙が出てくると歌う、このセンチメンタルな歌が、やけにジンとくるが、安っぽいと言っちゃ安っぽい。それでも、妙に気に入っている映画。

8月20日記

静かなお喋り 8月19日

静かなお喋り

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