風雲電影院

麒麟の翼〜劇場版・新参者〜

2012年12月22日
WOWOW放映

 東野圭吾原作のミステリの映画化。

 テレビドラマになった『新参者』の続編という形を取っている。原作は確かに同じ刑事が出てくるわけだし、舞台も同じ。しかし続編という感じではない。テレビドラマ人気を利用して客を呼ぼうということもあったのだろう。テレビドラマに出てきた人形町の店やキャラクターをまた出して来たりして、あくまで続編だという感じにしている。

 今回もロケは原作通りの場所でロケしている。日本橋の麒麟像前は当然として、殺害現場になる江戸橋の地下歩道でもちゃんとロケしている。ただし、ひょっとするとこの地下道は一部、セットを作って撮影したのかもしれない。容疑者が隠れていた浜町緑道もきちんと、その通りの場所。原作を読んだときは、「そんなところ、隠れられる場所じゃないでしょ」と思ったが、うまく撮っている。

 被害者役の中井貴一がいい。この人はいつの間にこんなにいい役者になったのだろう。最近の中井喜一が出ているドラマは、どれもドラマ自体の出来は別にして、この人はほんとにいい芝居をしている。この映画の被害者役だと知ったときは驚いたが、難しい役を実によく演じている。

以下、ミステリの真相に触れます。未見、未読の方はご注意を。

 発端は、ある中学校の水泳部で起こった事故。水泳大会のリレーでフライングをして失格になってしまったことから、大会のあとに三年生部員が二年生部員を指導中に事故が起き、二年生部員は溺れ、大きな後遺症を負ってしまう。

 私も中学生時代、一年間だけ水泳部に所属していたから、大会のことは体験している。都大会などのあと、成績に納得がいかないと、「これから帰って練習しよう」という気になる気持ちはよくわかる。しかし私らは顧問の先生の言いつけを守って、その日はみんな家へ帰っていた記憶がある。

 学校のプールに忍び込んだ部員たちは、練習と称してフライングをやった二年生部員にレグレスという練習をさせる。レグレスとは、足を使わないで手だけで泳ぐ練習。足を使わない分、腕に負担がかかり、腕は強くなる。ただ、ここで三年生部員は二年生部員の足を掴んで泳がせる。私の経験では、これはありえない。別に他人に足を持ってもらわなくてもレグレスの練習は出来るし、どうしても足が不安定になる場合は自転車のチューブを繋ぎ合わせたものを、一方をプールサイドに結わきつけ、もう一方を両足に結わいて練習する。貴重な練習時間を他人の足を持ってやるなんてことは私たちは無かった。だからこれは練習という名のシゴキでありイジメ。原作ではそこのところが弱かった印象があったが、映画ははっきりとシゴキでありイジメだったとして描いている。

 東野圭吾の小説は面白いのだが、ほとんどの作品が真相に辿り着くと暗い。読後爽やかな終りを迎えるというのが少ない。こういう作風なんだし、それを望んでいる人も多いんだろう。でも私にはあまりに重く感じてしまう。スカッと「面白かった!」と思いたい人には不向きなんだよねぇ。

12月24日記

静かなお喋り 12月22日

静かなお喋り

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