風雲電影院

恐怖の報酬(Le Sulaire de la peur)

2013年9月2日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1953年作品。アンリ=ジョルジュ・クルーゾー。

 これは、観たのは遥か昔、しかもテレビ放映だぞ。Wikipedia によると、1967年に『日曜洋画劇場』で放映されたとあるから、その時に観たのかもしれない。とすると、ざっと46年前。

 二時間半近くあった。おそらくディレクターズカット版だろう。
 とにかく最初の方は、まったく記憶にない。もちろん、『日曜洋画劇場』はディレクターズカット版であるはずもなく、あのころは二時間の放送枠に収まるようにカットして放送してさえしていたから、見覚えのないシーンが出てくるのは当然と言えば当然。
 それにしても、物語が動き出すまでに40分かかったのには驚いた。この部分、今の映画の作り方から見ると、絶対にありえない余計と言えば余計に思えるシーン。今の映画は最初のツカミが重要で、こんな悠長なことをやっていては今の観客は寝てしまう。DVDで観る人は、途中で放棄してしまうかもしれない。
 しかしこの余計な部分が結構重要で、登場人物たちの性格を描く役目をしているし、緊迫したシーンが続くこのあとの展開の前の、ユーモラスでなんとものんびりした描写は、それはそれで面白い。

 『日曜洋画劇場』の二時間枠というのは、CM、解説、予告などを引くと、実質一時間三十分をちょっと超えるくらい。当然、最初の40分はすべて無かったろうし、そのあとの部分もかなりカットされていたのかもしれない。

 それにしても、当時ヒッチコックと並び称されたクルーゾーのサスペンス技法は凄い。一難去ってまた一難の試練というのは、主人公のイブ・モンタンの役名マルコから、『スーバーマリオ・ブラザース』というゲームの名称が生まれたといわれるだけのことはある。しかしあちらは、何回でも、やり直しの利くゲームなのに対して、こちらはやり直し何て出来ない。

 憶えているつもりでいたサスペンスの部分も、ほとんど忘れていた。これを観直せたのは良かった。第一、テレビのはザックリとカットされていたと思われるだけでなく、吹き替え出し、1967年当時だとすると、かなり小さな受像機で観たはずだから。これはやはりスクリーンで観ないと。

 なんといっても上手いのは、トラックを切り返すための、崖の上に突き出た吊ってある待避所のシーン。ワイヤーで引っ掛けてあるだけのこの場所のワイヤーが切れそうになるところでは、身体がまさに固まってしまった。効果音も音楽もほとんどなく、それでいてこんなに緊張したシーンになったのは、やはりカットの繋ぎの勝利だろうなぁ。これぞ映画ってものだ。

 最後まで観ると、なんだか無性に導入部の、のんびりした部分がまた観たくなる。それもまた名画だと言われている所以かもしれない。クルーゾー監督が、ヒッチコックに比べると遥かに寡作だったのが悔やまれる。

9月3日記

静かなお喋り 9月2日

静かなお喋り

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