レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(Leningrad Cowboys Go America) 2014年11月17日 三日月座BaseKOMシネマ倶楽部 アキ・カウリスマキは今まで一本も観たことが無かった。どうせ東欧の難解なインディース映画作家だろうくらいにしか思っていなかったのだが、これを観たら考えが変わった。カウリスマキ、面白い。なんだか中毒性があるくらいに面白い作家なんじゃないかと思えてくる。 これはおそらく『ブルース・ブラザース』みたいな映画を撮ってみようと思ったのじゃないだろうか。よく考えると『ブルース・ブラザース』も滅茶苦茶な映画だったが、これはあれよりももっと滅茶苦茶。実は『ブルース・ブラザース』そのものをバカにしているのかもしれない。 レニングラード・カウボーイズは架空のバンドだが、フィンランドの実在のバンドが演じている。のちにレニングラード・カウボーイズの名前で日本公演もしているが、なかなか達者なバントで決して下手くそではない。それが最初のシーンではわざと下手くそっぽく演奏するのが可笑しい。プロモーターが見て、「売れないけど、アメリカなら売れるかもしれないからアメリカに行け」って、相当にアメリカをバカにしている。それで空港に行くのに、トラクターに荷物を積んでなんていうのも自分の国をバカにしているのだけど、なんとも可笑しくて笑ってしまう。 アメリカに着いてライブハウスでオーデションを受けて、「君らの音楽は古い。今はロックだ」と言われて、メキシコの結婚式のバンド演奏の仕事を貰い、メキシコまでアメリカを縦断して行くロードムービーになるのだが、ここからがもう『ブルース・ブラザース』そのもの。 それにしても、今はロックが流行りだと言われて、ロックについて何も知らない彼らが突然ロックを演奏し始めるなんてありえない設定なのだが、それを平気でやってしまう。モーターバイク好きの連中が集まるライブハウスで、まったく受けないとみるや、アメリカで出会ったイトコ(これも無理矢理な設定だけど)が、ギタリストになにやら指示を与えるや、ステッペン・ウルフの Born to be Wild を演奏しちゃって大受けっていうのも、ありえねー。打ち合わせもリハーサルも無しで、あの曲が弾けるなんてことあるかい! 『ブルース・ブラザース』も同じようなものだったから、まあバカにしてるんだろうけど。いや、アメリカのミュージカル映画そのものをバカにしてるのかも知れないけどね。 役者とバンドとアメリカを旅しながら、即興でコントを考えて、それを繋げて映画にしたらしいのだけど、これはうまく作ってあるよなぁ。なんとなくリチャード・レスターがビートルズを使って撮った映画を思い出したりもしたけど、音楽と笑いっていうのも相性がいいのかもしれない。 インディーズ映画でこれだけ笑えたのは初めてかもしれない。アキ・カウリスマキのほかの映画ってどうなんだろう。ほかのはもっと真面目に撮っているのかなぁ。機会があったら、ほかの作品も観てみよう。 11月18日記 静かなお喋り 11月17日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |