風雲電影院


ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(Nebraska)

2014年8月18日
早稲田松竹

 ブルース・ダーン。昔っから好きな役者さん。コンスタントにずーっと映画に出続けていて、もう70代後半になったんだね。アクションものも多くて身体のキレもよかったんだけど、今回はジイサンの役を実に趣きのある演技で演じている。もともと無口だったという設定で台詞も多くないのだけど、認知症なのか、あるいは頭ははっきりしているけどちょっと思い込みの激しい人物なのかも、わからない。でも昔のことは大分忘れてしまっているらしい。現在の最大の関心事は、DMで送られてきた、100万ドルの当選手紙。あきらかに詐欺なのだが、本人は本当に当たったものだと信じている。遠く離れたリンカーンまで賞金を取りに行こうと徒歩で出かけてしまったりする。いくらこれは詐欺なんだからと息子が説得しても聞こうとしない。かくて息子は、この父親を自動車に乗せてリンカーンまでの旅に出ることにする。

 ロードムービーではあるのだけれど、その旅は、途中で立ち寄ったお父さんの生まれ故郷でのことが大部分を占めることになる。おとうさんは、どうやら若い頃はモテモテだったらしいということがわかってきて、一方で口やかましいお母さんの方は、自分の方がモテてたのだけど、この人と一緒になってやったんだと言っている話が疑問になってきたり。久し振りに逢った叔父さんもいとこ兄弟も、実に嫌な奴だったり。宝くじの事は離さないように父親に言っておいたのに喋ってしまって町中で大騒ぎになってしまったりする。すると嫌ないとこ兄弟の態度が変わったり、いろんな人が、「昔金を貸してやったろ」とか「世話してやったろ」と、賞金の一部を分けてくれって言いだしたりして。なんかこれって、遺産相続に群がる親族の話にも似たところがあってどこの国でも同じだなと思ったりする。いや、親族でもないのに金を少しよこせと言ってくるって、普通の感覚だと「ありえねぇー」って思うけれど、そういう人、実際にいるんだろうなぁ。中でも一番嫌な奴が級友のステイシー・キーチ。この人ももう70代。これまた私の好きな役者さんであり、この人もコンスタントに映画に出続けている。もう、こういう役者さんが出ているだけで、この映画はうれしい。

 日本のこの手の詐欺って、相手の住所に行っても、そんな会社は存在しないっていうパターンなのだけど、この映画だとちゃんと存在する。小さなオフィスに女性がひとり。詐欺だってわかってる息子が手紙を差し出すと、パソコンで何やら調べていて、「当選していません」って。替りに記念品として帽子を貰ったりして、それがもう人をバカにしているものにしか見えないのだけど。「こういう風に、やってくる人間ってほかにもいるんですか?」と尋ねると、「たまにね」と言われる。ほとんどの人が最初っから詐欺だとわかってる類のDMなんだね。

 なんだか寂しく終わりそうな映画なんだけど、幕切れの爽快さっていったら、これまた楽しいラストで、「やったー!」という気持ちいい終わり方。お気に入りの一本になった。

8月19日記

静かなお喋り 8月18日


静かなお喋り

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