ニンフォマニアックvol.1 vol.2(Nymphomaniac) 2015年5月8日 新文芸坐 タイトル通りの色情狂の女を主人公にした映画。vol.1とvol.2に分かれているが、これは二本で一本。vol.2はvol.1の終わりから始まっていて、vol.2から観始めるのはあまり感心しない。この映画の結末を知ってしまってから頭に戻るというのでは、映画を途中から観たのと同じだから。去年ヒューマントセストシネマで二本別々に公開されたときていたときに「なんだ、これは?」と思っていた。ポルノ映画だろ、これ? しかも二部作らしい。監督は誰かと思ったら、あの暗〜い映画で、観ていてうんざりしてしまった『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリアー。うへーって思っていたら、ロードショウ後、[早稲田松竹]で二本立てで一週間上映したところ大入りだったようだ。みなさん、お好きですなあと思っていたら、今度は[新文芸坐]でも三日間、二本立て上映ということで、私も好きですねぇ、観に行ってしまいました。 R18+だから、成人指定のポルノ映画。でもこれを観て欲情する人なんて、まず、いないんじゃないかなぁ。もともとそういうことを目的に作られた映画じゃない。初老の男がある晩、道に倒れている女性ジョーを助けて家に連れてくる。怪我をしていて疲れている様子のジョーはミルクテイーが飲みたいというので、男は熱いミルクティーを与え、ベッドに寝かせる。するとジョーは自分の身の上話を始める。自分は子供の時から性に目覚めた色情狂だと言うのだ。かくてジョーの長い長い話が始まる。自分の性器に興味を持った幼少期。処女を棄てた思春期。そして男漁りを始めたハイティーン。50歳の現在に至るまでの性遍歴だから、ありとあらゆることが出てくる。どうもファザーコンプレックスもあるらしくて、父との近親相姦。世界中を歩いての他人種とのセックス。巡り巡っての初恋の男との結婚。夫公認の浮気。出産。不感症。SM。レズビアン。こういったものを、すべて経験して現在に至るという映画。 こう書いていると、さぞかしエロチックと思われそうなのだけど、なぜか不思議とエロスを感じない。そういう風に撮っているからなんだろうが、肉体と肉体が交差するだけ。スケベなものを期待するならAVでも観ることをお薦め。 とにかくねぇ、色情狂だというジョーがセックスをしていて、まったく楽しそうじゃないのですよ。四時間観続けて、うんざりしてきちゃった。そうだよなぁ、やっぱり『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の人だもんね。 最終章で、イアン・フレミングのジェームズ・ボンドのワルサーPPKにまつわるエピソードがそのまま使われているところは、ジェームズ・ボンド好きの人はニヤリとするだろう。 音楽に Born to Be Wild や Burning Down the House が使われているところは古いロックファンはうれしいけれど、ラストシーンに Hey Joe がかかるって、いかにもって感じで、私はちょっと引いてしまいましたけれどね。 5月9日記 静かなお喋り 5月8日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |