温泉スッポン芸者 2014年6月9日 三日月座BaseKOMシネマ倶楽部 1972年、東映作品。併営は若山富三郎の『極道罷り通る』だったらしい。 このころの東映というのは、非常に特殊なプログラム・ピクチャーを作り続けていた頃で、常に男目線。女子供は、ターゲットとして相手にしなかった。もうヤクザ映画であるとか、こういったエロ映画。ピンク映画よりは製作費があったから、やりたい放題だった。東映の映画館の前には、怖い顔をしたヤクザ役の役者のポスター。おっぱい丸出しの女優さんのポスター。とても子供連れでは歩けない独特の雰囲気があった。 杉本美樹をWikipediaで調べてみると、案外主演作が少ない。もっとたくさんあったような気がするのだが、助演の形で出ていたのが多かったんだね。デビューが1971年の『温泉みみず芸者』。主演を取ったのが翌年の『徳川セックス禁止令 色情大名』。その次がこの『温泉スッポン芸者』で、そのあとからは女番長シリーズになる。『温泉スッポン芸者』で芸者姿でオートバイに乗るシーンが二ヶ所あったから、それが買われたのかも知れない。それで東映で主役を張った最後の作品が、あの傑作『0課の女 赤い手錠』(1974年)なんだから、東映でのピークは意外と短い。そこからは、だんだん東映から離れていって、ATG系の映画に出るなどして、1978年には結婚、引退してしまった。 それで『温泉スッポン芸者』だ。もちろん初見(笑)。いや、これがもう実に呆れ返ったというか、いわゆるプロクセム・ピクチャー。90分間、男を楽しませればいいだろという視点に立った、ストーリーも情感もどうでもいいやという、志が高いんだか低いんだかわからない映画。 一応、大まかなストーリーとしては、杉本美樹の生まれ育った地方の温泉に、セックスで男狂いにさせてしまい、そうなった女を余所に売りさばこうとする性豪が現れる。一方、杉本美樹はセックスした相手を昇天させずにはおかない、これまた名器の持ち主。最後はこの両者のセックス勝負・・・という書いているだけでバカらしくなるオハナシ。 しかし、これだけでは90分持たないらしくて、そこに、杉本美樹が慕う、スッポン料理職人のエピソード(師匠が天然ものスッポンにこだわり、店を潰してしまうが、近くの川に放流したというスッポンを長年捜しまわっている)があったり、杉本美樹の妹分のエピソード(父の仇と性豪と野球グラウンドでセックス勝負をする。もうバカバカしさの極み)。杉本美樹を愛するあまり彼女の等身大フィギュアを作り上げる純情?変態?男のエピソード(フィギュア似てないだろ!)。なぜか人体改造で日本人をみんな外人にしてしまう男のエピソード(山城新吾。アドリブ多いみたい)。あまり意味なく出てくる文化人ゲスト(笹沢左保、田中小実昌、団鬼六、福地泡介)。笹沢左保のところでは『木枯らし紋次郎』のテーマが流れ、長い楊枝のギャグがある。金子信雄がセックスの末「どこか遠くへ」と言い残して死んでしまったあとに、仏壇のアップから、ジェリー藤尾の『遠くへ行きたい』がかかって、どこかのきれいな海岸シーン。やりたい放題じゃん。 よくわからないセックス勝負に勝利した杉本美樹は、また芸者姿でオートバイに乗って旅立っていく。どこ行くの〜。あっ、女番長になりに行くのか! 6月10日記 静かなお喋り 6月9日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |