風雲電影院

ペインレス(Insensibles)

2013年9月13日
ヒューマントラストシネマ渋谷

 『スクリーム・フェスト スペイン 2013』の一本。

 ベルリンさんは、今年の春のベルリン・ファンタで観ている。

 これはベルリンさんも指摘していることだが、私はどうもこの主人公に感情移入が出来なかった。医師のデヴィッドは婚約中の女性とドライヴ中に事故を起こし、女性は死んでしまう。デヴッィドは怪我をするが一命を取り留める。
 ドライヴ中の会話で週50時間手術をしていたなんて言っているから、それが自慢なんだろうけど、疲れた身体でドライヴなんかに行くなよという気になる。
 この男、事故を起こしておきながら悪びれた態度が見えないのがイライラしてくる。単独事故だけれど、これは不注意運転だろうが。
 しかも、同乗していた女性は死んでいるのである。もう少し亡くなった女性に対する、すまなかったという思いは無いのか?
 事故で入院したデヴィッドは精密検査の結果、リンパ腫を患っているがわかる。一瞬覚悟を決めたかに思えたデヴィッドだが、「しっかりしなくてはいけませんよ、あなたは父親なんですから」と言われる。そう、同乗者の女性は死んだが、妊娠していて、子供は奇跡的に助かったのだ。
 さて、となると父親として生きねばならないという自覚はできるのだが、生き延びるためには肉親から骨髄移植を受けねばならない。それで、ほったらかしだった両親のところへ行き、骨髄移植をしてくれと頼むわけだが、な〜んか無礼なんだよなぁ、この態度が。

 このときに両親は泣き出して、「お前に骨髄を移植するわけにはいかない」と告げる。えっ!? だって、いくら無礼とはいえ自分の息子だろ。これって宗教的問題でもあるのか? と、実はデヴィッドは自分たちの血を分けた子供ではないという話を聞かされるのだ。

 そして冒頭から始まっている、1930年代からの痛みを感じない子供を巡る話と、自分の本当の両親を捜すデヴィッドの話がラストに向って進んで行くわけだが、スペインの近代史を知らないと、いまいち解り難いところも出てくる。痛みを感じない子供たちは山の中の施設で実験材料のようにされるが、なかでひとりモンスターのようなものが生まれてしまう。

 終わってみれば、なんとなく政治と軍事に利用されたモンスターの悲劇みたいなものを描きたかったのかなぁとも思うが、な〜んか中途半端な印象。そしてデイヴィッドも。

 で、デイヴィッドはこれからどうするわけ? なんだか何も解決しないで終わってしまうのって、どうなの?

 医者なら、その汚らしいヒゲ、剃れよ。

9月14日記

静かなお喋り 9月14日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置