風雲電影院

殺しの分け前/ポイント・ブランク(Point Blank)

2014年4月14日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 リチャード・スタークの、悪党パーカー・シリーズ第一作『人狩り』The Hunter が原作の1967年作品。これは確か、映画館では見落としてしまって、テレビ放映で観たんだと思う。面白かったけど、なんだかイマイチ意味不明でよくわからなくて、原作を買って読んだ。そしたら、やけに面白くて、その後、シリーズになって続々と刊行され始めたから、夢中になって読み続けていた。

 今観直してみても、特に出だしのところは不親切な描写で、初めて見た人は、これは戸惑うだろうなぁ。何? 何が起こってるの? という感じ。興味を持たせる編集の仕方なんだといえばそれまでなんだけど、これじゃあ、却って投げ出したくなるかも。

 監督はジョン・ブアマン。これを撮る前にデイブ・クラーク・ファイブを使って『五人の週末』Having a Wild Weekend という映画を撮っているのだが、これ、私見ている。ビートルズの映画が当たったので、それにあやかって作ったような映画だった。私が中学生の時にビートルズの映画を含む三本立ての映画館で観た。これがもう、ちっとも面白くなくて、ひたすら退屈だったという印象しかない。そのあとがこの『ポイント・ブランク』で、さらにそのあとが、これで一緒にやったリー・マーヴィンと三船敏郎の『太平洋の地獄』というヘンテコな映画。そしてバート・レイノルズ、ジョン・ボイドで傑作『脱出』を撮ったかと思うと、『未来惑星ザルドス』という、なんじゃこりゃという映画を作ったり。こんなわけわかんない監督も珍しい。

 小説のパーカー・シリーズは、もうこのリー・マーヴィンの印象が強いので、読んでいてそのままリー・マーヴィンを思い出しながら読んでいたが、読み続けるうちに、もっと冷酷非情なキャラクターという印象が強くなっていった。『人狩り』は、のちにメル・ギブスンでリメイクされることになるのだが、「ちがうだろ」というのが大方の意見。それはうなずける。

 リチャード・スタークは、ドナルド・E・ウエストレイクがパーカー・シリーズを書くときの別名義の名前。『人狩り』が1962年。ウエストレイク名義で書いていた初期のころの作品というのは、これまた暗いのが多かった。パーカーものも、この初期のは特に暗くて、それがシリーズが進むに従って、冷酷無比のパーカー像はそのままに、話自体がどんどん面白くなって行って、サブ・キャラクターに魅力ある人物が出てくるようになっていった。極めつけはアラン・グロフィールド。あまりの強烈なキャラクターゆえ、スピン・オフさせて別シリーズになったりした。そうこうしているうちに、ウエストレイク自身の作風が変わってきてしまって、ユーモア・ミステリを好んで書くようになっていく。ついには同じ強盗ものでも、1970年の『ホット・ロック』を皮切りにして始まったドートマンダー・シリーズに力を注ぐあまり、暗いシリーズだったパーカー物を1974年の『殺戮の月』を最後に、一時封印してしまった。シリーズが再開したのは、なんと23年後の1997年『エンジェル』から。

 映画の方も、こういうのあまり今は流行らないのかね。ジェイソン・ステイサムで撮ったけれども、続編の話も聞かないし。

 『ポイント・ブランク』についてまだ何も書いてないのだが、あまり書くことがないんだなぁ。今回観直してみても、つくづく変な映画。これを傑作だという人も多いようだが、どうなんだかなぁ。

 『人狩り』も、読んだのはもう40年以上前ですっかり忘れてしまっているし、パーカーものだったら、それ以降のものの方が面白かったし。ただ、当時としては、こういうキャラクターは目新しかったからね。そのあたりが評判よかったのかも。

 途中、ライヴハウスに行くところがあって、なにやら黒人歌手がジェームス・ブラウンばりのファンクを演っているのだけど、インターネットで調べてみたら、スチュー・ガードナー・トリオだって。知らなかったなぁ、このバンド。

 役者は脇役俳優をたくさん使っているようだけど、アンジー・ディキンソンが出てる。あの『リオ・ブラボー』のきれいな女優さん。あのときは20代後半だったと思うけれど、『ポイント・ブランク』のときは、30代半ば。決して一般人とは言えないヤクザの情婦って感じの役だけど、この時点でもうきれいなだけの女優さんじゃなくなっている。そのあと『殺しのドレス』に出たときは50歳近くなっていたけど、欲求不満の中年女性役。『リオ・ブラボー』のイメージからちゃんと脱却したんだから偉いなぁ。結婚したりして作品数は多くないけれど、いい役者さんだ。

 悪党パーカー・シリーズ、今ではほとんど小説が手に入らない。とくに角川文庫で出してたやつは、もう二度と手に入りそうにないなぁ。もう一度通して読んでみたいものなのだけれど。

4月15日記

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