ポリスストーリー レジェンド(Police Story 2013 警察故事2013) 2014年9月28日 新文芸坐 ジャッキー・チェンの映画を観なくなってどれくらい経つだろう。一番面白かったのはやはり70年代から80年代にかけてで、とにかく新作がかかると必ず、ほとんど公開初日に観に行っていた。それが90年代になってからジャッキー・チェンの映画は急速につまらなくなって行ってしまった。ハリウッドに進出したのも裏目だったし、シリアスなストーリーものを作り始めたのも裏目だったような気がする。ジャッキー・チェンの映画に期待するものは、無力でも一生懸命に強大な敵に立ち向かっていく真面目さ、そしてそれとは裏腹なユーモアだったはずだ。 最近の香港映画って、北京語版を日本公開することが多くなって、それが大きな不満。香港映画はやはり広東語のどこかユーモラスなイントネーションが聴こえてきて初めて、あの世界が生きてくるというのに、北京語ではその楽しさが半減してしまう。ジャッキー・チェンが往年のヒット作『ポリスストーリー』をまた持ってきたことになるのだが、要するにジャッキー・チェンが刑事役だってことだけなのかも知れない。そしてよりによって、もう舞台は香港ですらなくなっている。今回は北京。当然のごとく北京語だ。 もう昔のような、ジャッキーの身体を張ったアクションシーンは無い。それと同時に、ジャッキー・チェンの顔を見ると、トシ取ったなぁと、当然のことを感じてしまう。そうだよな、今年還暦だもの。 ファーストシーンでいきなり、ジャッキー・チェンが自分のこめかみに銃を押し付けて引き金を引こうとしている顔が画面いっぱいに映される。何事かと思うとこれがクライマックスシーンで、時間は過去に戻される。ジャッキー・チェンには若い娘がいて、その娘にクラブに呼び出されて、行ってみると、そこには自分と同じ年くらいのクラブ経営者がいて、「私、この人と結婚するの」と言われて仰天。年齢も年齢だが、どう見たってあまりよろしからぬ人物。しかも娘ときたら身体に入れ墨を入れて、ほとんどグレちゃってる。ジャッキーが叱ると、「父さんは、仕事ばっかりで、私のことなんてまったく気にかけてくれなかったじゃないの!」と、これまたあまりにもベタな展開。あらららららら。 話は、ほとんどこのクラブの中だけの閉ざされた空間で起こるから、やや息苦しい。そのせいか回想シーンのようなものがやたらと挟まってきてめまぐるしい。ジャッキーがビルから飛び降りようとしている男を救うエピソードなど、思い切って最初に持って来てしまえばいいのに、途中で挟み込むから、なんだか唐突に感じてしまう。 ジャッキーが昔みたいには動けないから、どうしても引きの画像でのアクションより、アップで、細かいカット割りという目が疲れるだけのシーンが多くなる。それでも途中の金網デスマッチ(?)は迫力あった。闘うか闘わないかと問い詰められて、外野から「警察でしょ、闘いなさいよ」と無責任なヤジを浴びせられたりして、対戦相手はとてつもない強い男。でも散々やられまくって最後はスリーパーホールドで倒すって、おいおいついにプロレスかよ。カンフーはどうしたんだ、とツッコミを入れたくもなるが、これが今のジャッキーの精一杯のところなのかもね。 それまでグレていて「お父さんなんか大っ嫌い」と言っていた娘が、結婚相手に騙されていたとわかって、(←遅ぇよ!)、いきなり「お父さん、死なないで」って百八十度方向転換っていうのも、なんだかなぁと思うけど、こういうベタな方が中国では受けるんだろうか? ジャッキー・チェンって、最近は発言内容もやたら中国寄りのことを言いだして話題になっているけれど、そっちへ行っちゃうのかなぁ。80年代の笑いを忘れなかったジャッキー・チェン映画は、どんどん赤く染まって行ってしまうのだろうか。 9月29日記 静かなお喋り 9月28日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |