風雲電影院

レヴェナント 蘇えりし者(The Revenant)

2016年4月26日
109シネマズ木塲

 『パードマン あるいは無知がもたらす予期せぬ奇跡』の長回しを観た時も思ったが、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督って鬼だね。今回は、それをはるかに上回っている。この酷寒の景色を撮影するだけでもスタッフはとんでもない苦労を強いられただろうし、マイナス何十度という状況で川に入らせたり、雪の上を這いまわさせたりってことを役者にやらせるなんて、まっとうな神経じゃない。これでアカデミーで監督賞を取ったって、これはもう監督だけの力じゃない。だから作品賞も主演男優賞も撮影賞も音響賞も取ったわけで、これを見せられちゃあ、いかになんでもアカデミーあげないわけにはいかないでしょ。

 特にレオナルド・ディ・カブリオはよくやったと思う。もう人間じゃないんじゃないかと思うくらい。
 熊と戦うところはCGだとしても、かなり怖い。これを見てしまったら、もうちょっと山に行くのを躊躇ってしまうくらい。でも、こんな寒い時って、熊さんは冬眠中なんじゃないの、とツッコミをいれてしまいたくなったりして。
 熊にやられて喉を爪で掻っ切られて、それ以降声帯をやられたのか、かすれた声になっしまうところは、私も喉の手術でかすれた声しか出なくなってしまったから、妙にリアルに感じてしまったり。

 とにかく冒頭でネイティブ・アメリカンに襲われるところから、ラストシーンまでまったく気を抜けないシーンが連続する2時間32分。ホッとするところ一か所もない。一昔前の映画だったら最初の30分やそこらはハンターたちが、その地にやってきた経緯やらなにやらのイントロダクションで潰れるだろうけれど、この映画はいきなり襲撃からだもんなぁ。

 とにかくストーリーが単純なのがいい。これって脚本ってどうなっているんだろう。実話をもとにしているらしいけれど、脚本家だったら、もっといろいろ台詞を増やしたり、登場人物を増やしたりしたくなってしまうんじゃないだろうか? それをしなかった脚本も清い。

 そして考えさせられてしまうのが、文字通り生き残るという意味でのサバイバル。子熊を守るためにグラス(レオナルド・ディ・カプリオ)を襲った熊も、熊としては至極当然な本能的なものだったろう。重体のグラスを見捨てたフィツジュラルド(トム・ハーディ)もネイティブアメリカンの襲撃を考えるとグラスは足手まとい。死ぬのを看取ってから埋葬しろと言われていたとしても早くこの場を立ち去りたい。自分の身を考えれば、私だってしたかもしれない。また置き去りにされたグラスも復讐の念がなければ生き延びられたかどうかどうかわからない。

 これでもかとばかりに大自然の風景を見せつけられて、人間なんてちっぽけだよなと思いながら、それでも生き残ろうとするのが動物であり人間でもあるとう現実を感じる。

 できることなら、家の小さなテレビ画面ではなく、できるだけいい映写状況の映画館でご覧になることをお勧めしたい。

4月27日記

静かなお喋り 4月26日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置