風雲電影院

リップヴァンウィンクルの花嫁

2016年4月7日
ヒューマックスシネマ池袋

 同窓会といったものに出席するのは、あまり好きではなかった。いい大学に入ったやつの姿を見たり、社会に出て成功したりして得意げなクラスメートの姿も、逆に落ち込んでいる人間の姿も見たくないというのがその理由だった。それが50代も終わりごろになって、昔のクラスメートに会うというのも悪くないなと思うようになってきた。もうこのくらいのトシになると、みんな人生の先が見えてきていて、まだみんな20年やそこらは人生も残されているだろうけれど、一応ゴールも見えてきている。そんな連中が集まって、学校を出てからどんな人生が待ち受けていたのかを語り合うというのは面白い。話を聞いていると、誰一人として順風満帆な人生を辿ったやつなどいなくて、多かれ少なかれ、みんな悩み多き人生を経験してきた者ばかり。ひとりひとりの人生を聞いていると、それぞれに物語があり、全ての人間がひとつひとつの小説になるなと思えてくる。人生とは選択肢の連続。どの選択しを選んだかによって、その後の人生はまちまちだ。

 『リップヴァンウィンクルの花嫁』のヒロイン皆川七海(黒木華)は、どちらかというと引っ込み思案でおとなしい性格。才気活発というわけでもない。どうやら大学を出て教員免許は持っているようだが、正規採用で教員になれたわけでもなく、非常勤。それだけで食えるわけもなく、コンビニのアルバイトもしている。授業も声が小さくて聞こえないと生徒からからかわれ、それがもとで非常勤教師の職も失ってしまう。地味な性格の故か恋人もできず、ネットのお見合いサイトで知り合った相手と結婚。ところが親戚も友人もいない七海は、便利屋(綾野剛)を使って偽の親戚を仕立てることになる。

 そこから先、この話って、どうなるんだろうと観ていると、まったく予想もつかない方向に、どんどんどんどん向かって行って、3時間の上映時間が瞬く間に過ぎてい行った。七海の場合、選択を迫られたのは、おそらくネットで結婚相手を決めたことと、偽の親族を披露宴に呼んだこと。実はそれだけで、その後の人生が決まって行ってしまったのだということが後からわかる仕掛けなのだが、流されて流されて、実に不思議な体験をすることになっていく。

 この皆川七海に加えて、後半から里中真白(Cocoo)が話にからんでくるのだが、この真白という女性、そしてその母(りりィ)の存在は悲しい。もう観ていて辛くなってしまうほど。

 この映画を観るために、今まで一本も観ていなかった岩井俊二監督の映画、『PiCNiC』、『四月物語』、『Love Letter』の三本立てを二日前に観たばかり。『四月物語』と『Love Letter』のヒロインは、明るく前向きな女性だったが、『リップヴァンウィンクルの花嫁』のヒロインは暗さを秘めた女性だった。

 ラストシーン。ベランダにいるヒロインの姿を見ていると、この人のそれから先の人生を知りたくなる。これまでの人生で何かが変わり、そのあと幸せな人生が待っていてくれるといいなと思えてくるのだが・・・。

4月8日記

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