立候補 2014年1月9日 ポレポレ東中野 2011年11月の大坂府知事選の泡沫候補を追ったドキュメンタリー。 この選挙では、いわゆる有力候補3人のほかに、4人の立候補者があった。映画はこの4人にスポットを当てている。岸田修、高橋正明、中村勝、マック赤坂。供託金300万円を払って、何もしないで家にいる人、奥さんを亡くし小さな娘を可愛がる様子くらいしか映像があまりない人、街角に立って挨拶を繰り返す人、そして中でも異様なパフォーマンスを繰り返すのがマック赤坂。勢いこの映画はマック赤坂を追いかけることになっていく。 とにかくわからないのが、なぜ勝てるという可能性がゼロというのに、彼らは300万円もの供託金を払ってまで立候補するのかということ。唯一わかるのは彼らが300万円という大金を出せる、どうやら資産家であるということくらい。だとしてもなぜ?という疑問はズーッと残る。 カメラはマック赤坂の否定的な部分ばかりを捉えているように思えるのだが、地下街でパフォーマンスを始めるシーンがある。マラカスを持って、ただ植木等の歌を流しながら踊るだけ。呆れた外国人が「本当に彼は立候補者なの?」と訊いているシーンがある。そして、マック赤坂を野次る男も。結局マック赤坂が政見を語るシーンといえば、政見放送でスマイルを広めようという主張くらいのもの。ひょっとするとマック赤坂は、真面目に政見を語ることの虚しさを感じていたのかも知れない。映画のホームページに寄せられた感想の中で、「マック赤坂のような色物候補とタレント候補って何が違うんだろう?」というのがあって、これは正に的を得ていると思った。知名度だけで当選してしまったタレント議員がこれまでどれだけたくさんいただろう。マック赤坂には話題性で知名度を売るくらいしか闘いようが無かったのかもしれない。 映画は冒頭で東京都知事選での外山恒一の演説で始まる。「多数決で決めれば、多数派が勝つに決まってるじゃないか!」 そう、少数派は無力だ。それは映画の最後でより明らかになる。大阪府知事選が終った東京で、今度は選挙が行われる。圧倒的な力を持つ自民党の選挙カーに近付いて行こうとするマック赤坂は、そこに集まった群衆に「帰れ」コールどころか、「クズ」コールされる。「クズ!クズ!クズ!クズ!クズ!」。もう圧倒的な数の言葉の暴力で彼の存在は否定されてしまう。こんなのが民主主義か? それにしても、なぜ植木等の歌をバックに踊るなんていうパフォーマンスをしたのか。大方の人には、ふざけているとしか取れないだろうに。彼の中では植木等の映画のように、スイスイと、のし上がって行くというイメージがあったのかも知れない。マック赤坂の息子さんという人が出てきて、父親には真面目に選挙戦を戦ってほしいと、いささか冷ややかな目でインタビューに応じていたのが、上の東京秋葉原のシーンでは、父親の味方になった感じで群衆に食って掛かる。その変貌にはいったい何があったのだろうか? マック赤坂を含めて4人の泡沫候補には、結果的に、それぞれ二万票以上の票が入った。これがを少ないとみるべきか、それとも「えっ、そんなに」とみるべきか、私には何とも言えない。 映画の中では、中国の人と、どこか欧米の人が泡沫候補をクレイジーだと言い、そんな人は自分の国にはいないと言っていたが、実際は欧米にはどこにでもいるらしい。中国となるとわからないが。 1月10日記 静かなお喋り 1月9日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |