風雲電影院

殺したい女(Ruthless People)

2012年11月19日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1986年作品。

 『ケンタッキー・フライド・ムービー』から始まったザッカー兄弟とジム・エイブラハムスのトリオの作品。ずっとパロディ映画を撮っていた人たちだったので、パロディではないコメディを撮ったというのが意外だった。公開当時観に行ったがアイデアが抜群なのと、ダニー・デヴィートとベット・ミドラーという、いい味の役者がズバリはまり役で面白いと思った。でも当時私は、このトリオにはパロディ映画ばかり期待していたようなところがあって、ちょっぴり不満に思ったのを憶えている。

 大金持ちの娘(ベット・ミドラー)と、財産目当てで結婚したダニー・デヴィート。死にかけていたはずの娘の父親は長生きするし、妻はおっかない女。なんとかならないかと思っていたところへ、その妻が誘拐され身代金を要求される。喜んだのはダニー・デヴィート。警察に言うと妻を殺すと言われて大喜び。警察が大手を振って動き出す。もちろん、現実にはこんなにあからさまに警察が動くことはないだろうが、そのへんがこのトリオ監督の持ち味。いかにもパロディ映画からの流れというか、なんだか、コントを長くしたような乗り。今だったら日本のコント・トリオあたりが題材にしそうだ。

 警察署長のビデオのくだりあたりも、いかにもこのトリオらしい笑いで、やっぱり生半可なコメディではないし、身代金受け渡し現場でのドタバタも、こういう乾いた笑いが取れるというのは並じゃない。

 とはいえ、一番の成功は、ダニー・デヴィートとベット・ミドラーをキャスティングできたことに尽きるんではないか。ベット・ミドラーもよくぞこういう役を引き受けたもので、喜んで演っているフシがある。誘拐されて暇なのか運動に目覚め、10キロだったか痩せたという設定。それでも、いかにもこんな女と結婚するのはごめんだと思わせるあたりがすこい。自分のプロポーションに自信を持ったのかポーズを作るところで、ジミ・ヘンドリックスのFoxy Ladyが流れるところでは大笑いしてしまった。

 もうひとり、いや一匹、いや二匹の名演は犬。こいつらにひっかきまわされるダニー・デヴィートの可笑しいことといったら!

11月22日記

静かなお喋り 11月19日

静かなお喋り

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