風雲電影院

三匹の侍

2014年12月1日
新文芸坐

 大人気だったテレビシリーズを私はほとんど観ていない。その理由はまったく思い出せない。裏番組を観ていたのかもしれない。あるいは父か母にチャンネル権があって観られなかったのか。

 この映画版は第一シリーズが終わったあとに作られた。1964年の作品。こちらも観ていなかった。

 初めて観てみて、さすがに娯楽映画としてよく出来ているので感心した。話としては、テレビシリーズの前日譚。三人が知り合う過程が描かれている。芝左近(丹波哲郎)が道で簪を拾うところが始まりで、その簪を投げてどっちへ行こうか決めるところで終わっている。

 三人がバラバラで、そのばらけ具合がストーリーを動かすのにちょうどよく作用していて脚本としてもよく出来ている。しかし今から観ると、いかにもな勧善懲悪ストーリー。映画の流れとしては今では古臭いというか、所詮テレビシリーズなのねと感じる。女性の描き方も古い時代劇映画のパターンから出ておらず、五社英雄の後期作品に観られるような個性の強い女性は出てこない。昔の、男が男のために作った時代劇。

 悪代官との武士と武士との約束なんていう、どう考えたって、それはあり得んだろうという笑ってしまう展開も、このころはまだ許されていたのだろうし、元はテレビなんだからと思うと、しょうがないかと思えてくる。それでもチャンバラ映画として面白く出来ているから、そのへんのことはどうでもいいのかもしれない。

 娯楽時代劇のお手本として、おそらく黒澤明作品があっての企画だったのだろう。『用心棒』『椿三十郎』の旅の浪人。『七人の侍』の武士道を守る複数の侍といった設定をごちゃまぜにしたようなドラマ。そういえば桜京十郎(長門勇)は武士ではなく農家の出という設定も、『七人の侍』の菊千代と似ている。

 年貢の取り立てに苦しんでいる農民と悪代官という設定も、よくあるパターンになってしまっているが、これも『七人の侍』の野武士を悪代官に変えたと思えば同じような図式。ただ、『七人の侍』は農民の勝利で終わるが、この『三匹の侍』のラストは悲しい。農民が動かないのだ。それに苛立つ芝左近。勧善懲悪といっても、だからといって『水戸黄門』のようなわけにはいかない。なにせただの浪人だものね。

12月2日記

静かなお喋り 12月1日

静かなお喋り

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