ソウルガールズ(The Sapphires) 2014年1月29日 ヒューマントラストシネマ有楽町 いきなりCCRの、Run Through The Jungle が流れ出して映画が始まる。ベトナム戦争当時の話だから、「おおっ!」となり、いやがうえにも『地獄の黙示録』を思い出してしまう。 実際にあった話を基にした映画。 私は、オーストラリアという国をあまりよく理解していなかったのだが、ここもアメリカと同じくヨーロッパから人が渡ってきて、悪く言えば乗っ取ったような国なんだね。それでそれまでのアボリジニと言われている先住民たちは追いやられてしまっている。彼らは肌の色も黒いから黒人という扱いを受けたりという歴史もあったわけだ。 それでまあ、ベトナム戦争のさなか、アボリジニの娘で歌が大好きな三人の姉妹、ゲイル、ジュリー、シンシアがコンテストに応募してカントリーを歌うも落選。審査員の一人デイヴが「これはインチキだ」と激怒。そして三人にはマネージャーを買って出る。このデイヴ、白人だが大のソウル・ミュージック好き。世の中の音楽の90%はクソで、残りの10%がソウルだとする、いささか偏った音楽感の持ち主。「カントリーなんかやめちまえ。カントリーもソウルも歌っているのは喪失だが、カントリーは、諦めて故郷に帰り嘆き暮らす音楽。ソウルはそれを取り戻そうとして闘う音楽なんだ」って、そこまで言うこともないだろうに。フハハハハ。 それで、さらにひとり従妹のケイを加えて四人組サファイアズが誕生する。このケイ、肌の色が白い。それで小さい時に白人として別の場所で育てられたという経緯があって、その辺の人種差別問題にも触れられているのだが、この段階ではあまり大きくは強調されていない。 カントリー歌ってた連中がいきなりソウルに転向ていうのも不思議な気がするが、実際にあったことなら納得せざるを得ない。それよりもカントリー・ミュージックといえば白人とばかり思っていたが、黒人のカントリー・シンガーもいるんだそうで、これもまた勉強になった。とはいえ、物語はこのあとサファイアズがオーデションに合格して、ソウルコーラス・グループとして、ベトナムのアメリカ軍基地を回ることになるわけで、肌の色の黒い女性がカントリーを歌ったとしたら、アメノカ人たちに受けたかどうか疑問だよなぁ。もっとも、だとしたら昔日本が敗戦したときにやってきたアメリカ兵たちが、日本人のバンドで満足したのかという問題もあって、この辺も私には微妙なところなんだけど。 衝撃的なのは、敵の攻撃で負傷した白人兵士に、サファイヤズのひとりが治療を手助けしようとして、この兵士に触ろうとすると、「俺に手を触れるんじゃない、このくろんぼ!」と怒鳴られるシーン。誰もそれに言い返せない。どんなにソウル・ミュージックが受けていても、あのころは、まだそんな時代だったんだねぇ。 ジュリー役のジェシカ・マーボイは、本当にオーストラリアのソウル・シンガーらしくて、いい歌声を聴かせてくれている。ストーリー自体は割とよくありがちなものなのだが、いいソウル・ミュージックがたくさんかかるので、この手の音楽が好きな人なら、飽きはこない。帰りがけに売店で売っていたサントラCDを買ってしまった。このサントラはお得だった。いい曲たくさん入ってる。 1月30日記 静かなお喋り 1月29日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |