風雲電影院

殺人の追憶

2015年4月6日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 2003年韓国映画。日本公開は翌年。一度観ているのだが、どこで観たのかは忘れてしまった。公開時ではなく、面白いという評判を聞いて、どこか名画座で観た記憶がある。公開されてから大分たっていた。いまからそんなに前ではないと思う。そのときの感想は・・・「なんだこりゃ」。今まで観たような映画とはまったく違うタイプの映画だった。

 地方で連続婦女暴行殺人事件が起こる。ソウルから刑事が応援に来たりもするが、いつまでたっても犯人は捕まらない。警察は怪しげな人間をしょっ引いてきては、拷問にかけたりして、無理矢理自白を取って犯人にしようとするが、あまりに杜撰な捜査で、ソウルから送られてきた刑事に、いい加減な捜査はするなと言われてしまう。しかしいかに地方の事件とはいえ、あまりにも捜査のやり方は酷い。何十年も前の話だろと思うと、これ、1980年代にあった実話を基にしているそうで、日本でもかつてはあったようなことととはいえ、韓国ではたかが30年前でもそうだったのかと思うと、驚かざるを得ない。

 この映画を観て、面白いと思う人と、面白くないと思う人は、両極端に分かれそうだ。私は最初に観たときは、これのどこが面白いのかわからなかった。日本でもよくある社会派推理映画のような撮り方だから、きっと最後には真犯人が見つかって、それは意外な人物だったという結末が付くものだとばかり思って観ていたからだ。それがこの映画は最後まで犯人は捕まらずに終わってしまう。実際に起こった事件だという情報も頭の隅にはあったが、未解決事件とは知らなかった。最後まで犯人が出てこないわけだ。ラストシーン、退職してセールスマンになった刑事が田圃の畦道の側溝を覗き込んでいると、小さな女の子がそれを見ていて、あることを呟く。何とも思わせぶりなシーンだが、だからなんなの?と感じたものだった。

 今回、もう一度観る機会を得て、今度は、これは未解決事件で、映画も最後まで犯人は出てこないんだということを念頭に置いて観ていたら、けっこう面白かった。冤罪捜査をする警察のいい加減さがユーモラスに描かれていて、かなりブラック。おそらく当時の捜査が酷いといっても、こんなに酷いとは考えにくくて、なんともブラックユーモアが漂ってくる作りになっていて、苦笑が起こるばかり。フィクションとはいえ、こういうものを作る韓国の人の国民性というものに驚いたし、こういうものを公開しても、なんとも問題にならない韓国の警察、社会というのも驚き。日本では考えられない映画だと思う。

 ただ、私は韓国映画にはもっと強烈なパンチの強いものを期待しているところがあり、この映画は、それほど好きにはなれなかったかなぁといったところではあるのだけれど。

4月7日記

静かなお喋り 4月6日

静かなお喋り

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