風雲電影院

白い花びら(Juna)

2015年8月8日
DVD

 アキ・カウリスマキ監督の1999年の作品。なんとモノクロ、サイレント。この人、よくいろんなことを考え付くものだ。サイレントといっても活弁は付かなくて、音楽だけは使用される。それももう、音楽に関しては人一倍詳しい人だから、使い方が尋常じゃない。これまでの作品では、ほかの人の曲をクラシックだろうが民謡だろうがジャズだろうがブルースだろうがロックだろうが、はたまた日本の『雪の降る町を』(『ラヴィ・ド・ポエーム』)だろうが、バンバン映像に当てはめていたのとは違って、全篇オリジナル(おそらく)の音楽を付けている。それがいかにもサイレントに付けるような音楽ではなく、ここでも場面によってクラシックからラテンからロックから、実に変幻自在。しかもそれらが実にピッタリくるんだから凄い。いやね、もともとアキ・カウリスマキの映画って台詞が少ないんだから、もうサイレントでもいいやということなのか。ただ、サイレントにしたことで、あまり役者に顔の表情を要求しなかったカウリスマキが、役者の顔の演技を、今までより豊かに演出をしているので、珍しい作品になった。

 なにしろサイレントということもあってストーリーも今まで以上にシンプル。

 ストーリーを最後まで書いてしまいます。ご注意を。

ある田舎に、ユハとマルヤの夫婦が住んでいました。
ユハは孤児だったマルヤの面倒をみるうちに、自然と夫婦になっていました。
ふたりはキャベツを栽培して売る農家として生計を立て、貧乏でしたが楽しく暮らしていました。
ある日、オープンカーに乗ったシュメハッカが村にやってきます。
シュメハッカの車はユハの家の前で故障してしまいます。
これを直すには部品を交換するしかなく、この部品が届くまで、人のいいユハはシュメハッカを家に泊めてあげることにします。
ここでシュメハッカはマルヤに目を付けます。
車が直ってシュメハッカは都会に帰りますが、後日ユハとマルヤにプレゼントを持って再び現れます。
ここでシュメハッカはマルヤを誘惑。都会の暮らしに憧れたマルヤはシュメハッカはと一緒にいなくなってしまいます。
都会でシュメハッカと暮らすことになると思い込んでいたマルヤは驚くことになります。彼女が連れて行かれた家はまるで売春宿みたいなところ。
マルヤは田舎に帰ろうと決心して、ここを抜け出そうとします。しかし彼女はこのときシュメハッカの子供を妊娠しているのに気が付き断念します。
妻を寝取られたユハは村人たちにバカにされ、シュメハッカからマルヤを取り戻そうと、斧を持ってシュメハッカのところに乗り込みます。
ところがユハは返り討ちに合います。
なんとかマルヤをタクシーに乗せて逃がしますが、ユハは重傷を負ってゴミ捨て場で死んでいくのでした。

 悲惨な境遇の現在から、どこかに旅立っていくというテーマが多いアキ・カウリスマキ。旅立った先でもいいことは待っていなかったという展開も多い人だが、この『白い花びら』は、冒頭での生活が貧しいながらも幸せそうな生活だっただけに、なんともやりきれない気になってしまう。

 しかし、それでもこの映画は嫌いじゃない。ほかのアキ・カウリスマキの映画同様、何回でも観たくなる。とにかく音楽がいい。途中、登場人物のひとりがアコーディオンをバックに歌うシーンがあるのだが、その部分は「えっ、この映画、サイレントじゃなかったんだっけ」と思うし、一部、ドアの開け閉めの効果音が入っていたりして、サイレントとしながらも遊んでいるようなところがあって、そのへんも好き。

8月9日記

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