風雲電影院

狙撃

2013年7月8日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1968年作品。公開時には観ていないが、去年の3月に新文芸坐の堀川弘通監督特集で観た。

 冒頭、加山雄三の殺し屋がニュートーキョーのビルの屋上から、東京駅を出てまだスピードを落としたままの新幹線車内の人物を狙撃用ライフルで撃つシーンは、日本映画の名シーンのひとつと言っていいかもしれない。

 去年初めて観たときは、それほど感じなかったのだが、この映画の浅丘ルリ子の役は面倒なオンナだなぁという感じ。冒頭のシーンのあとで射撃場でライフルを撃つ加山に近付いてくるのがのがモデル業をやっている浅丘ルリ子というわけだが、どうも上から目線の嫌な奴。ふたりは簡単に関係を持ってしまうわけだが、ニューギニアに憧れを抱いているオンナで、蝶を集めるのが趣味って何だ? 不思議すぎるキャラ。しかもよりによって、ホテルの中でニューギニア原住民のものらしいダンスを踊り、それに加山が屑籠を打楽器にして叩くって、もうシュールすぎてわかんない。このシーンはひょっとすると『冒険者たち』(1967年)からのイタダキのような気もするのだが。

 後半は老練の殺し屋森雅之に狙われるという設定。この森雅之がカッコいいんだよなぁ。スナイパーの腕としては優秀でも、どこか殺し屋としての生き方にまだ甘ちゃんな加山よりも徹底したプロ。

 よく出来ている脚本ではあるが、途中で一発で相手を確実に倒せる強力な弾丸を岸田森が作るという伏線がせっかくあるのに、これがまったく生かされずに終わってしまうのは惜しい。

 しかも、ネタバレをやってしまうと、ラストで加山を射殺したと思った森が不用意に近づいていくというのがおかしい。プロだったら、ここは念のためにもう一発か二発撃ちこんでから近づくだろう。

 フィルム・ノワールの影響も受けているのだろうが、どうせな殺し屋ものをやるならアラン・ドロンの『サムライ』(1967年)くらいのものをやって欲しかった。もっとも一貫してフィルム・ノワールを撮り続けてきていたジャン・ピエール・メルビルと『裸の大将』の堀川弘通を一緒にしてはいけないが。

7月9日記

静かなお喋り 7月8日

静かなお喋り

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