風雲電影院

テルマ＆ルイーズ（Thelma and Louise） ２０１５年５月４日 三日月座ＢａｓｅＫＯＭシネマ倶楽部 　いわずと知れたリドリー・スコット監督、1991年作品。24年ぶりに観たことになる。 　田舎町のダイナーのウエイトレスをやっているルイーズ（スーザン・サランドン）と主婦のテルマ（ジーナ・デイヴィス）が、ヴァカンスを楽しもうとオープンカーに乗って出発。ルイーズにしても毎日働きづめで嫌になっていたんだろうし、テルマにしても口やかましい夫にうんざりしていたんだろう。ルイーズの雇い主の、もうじき人手に渡ってしまう別荘で、２〜３日のんびりしてくるつもりが、途中で寄った酒場でトラブルに巻き込まれてしまう。「わ〜い、休暇だ〜」と少々羽目を外し過ぎてはしゃいだ結果、テルマはタチのよくない男にレイプされそうになる。そこへ男に拳銃が付き付けられる。ルイーズだ。それで相手が大人しく謝ればなんのことなかった。悪びれずに悪態を吐いたのがキッカケでルイーズは男を射殺してしまう。 　なにも殺すことは無いじゃないかと思うのだが、あとからわかってくるのは、どうやらルイーズも以前に似たようなことをされた過去があったらしい。テルマが何度訊いても、「その話はしたくない」と突っぱねる。この言いたくないほどの過去の話というのは最後まで伏せられたままで終ってしまうわけだが、この辺りがアメリカ映画。日本映画だと、その過去の出来事がインサートされたり、長々と語られたりしてしまって、うんざりしてくるのだろうが、そういうことをバッサリ切ってしまうところに潔さがある。 　男を殺してしまって、その場から逃げてしまう。「メキシコに逃げよう」って、アメリカはなんでかんでメキシコに逃げるのね。日本だったらどこだろう？　中国や東南アジアかね。日本の場合ほかの国とは地続きじゃないから、車でそのままってわけに行かない。 　逃げるには資金が必要だっていうんで、古い男友達を頼ったりして、それで最終的には強盗。このぶっ飛び具合が痛快。 　それにしても、70年ごろのニューシネマのころって、こういう題材の映画がたくさんあったのだけど、20年遅れて、こういう映画が出来たっていうのは面白い。しかも70年ごろって、男女カップルとか、男２人に女１人のトライアングル。女２人って誰もやってなかった。女２人というのがミソだね。これが男２人の逃避行ってなるとゲイの臭いがしてきてしまう。現実でも女２人の旅行者って多いけれど、男２人って組み合わせ、少ないよなぁ。しかも最初はルイーズが主導権を握っていたのが、次第にテルマに覚悟が出てきて、対等の立場になるってとこもいい。人によってはこのふたりの関係をレズと見る人もいるようだけど、そうではないと思うな。 　これは男社会で、精神的にも肉体的にも嫌な目にあった女の不満が爆発した様を、ちょっとオーバーに描いたロードムービー。彼女たちの心情を理解しているらしい刑事役のハーヴェイ・カイテルが、いい役を持って行った感じ。 　世の男性よ、やはり女性に大切にしなければいけませんな。女性を追いこんではいけない。なにをされるかわかりません。 ５月５日記 静かなお喋り ５月４日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る

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