共喰い 2014年4月5日 新文芸坐 併営の『ペコロスの母に会いに行く』が観たくて入って、ついでに観た。田中慎弥の芥川賞受賞作の映画化。もともと芥川賞を取ろうなんていう小説にはほとんど興味が無いから、これもあまり積極的に観たいとは思わなかったのだけれど、成行きで観てしまった。 冒頭のナレーションを聞き逃したらしく、これ、いつの時代背景の物語なんだろうと観ながら思っていて、携帯電話は出てこないし、家に置いてあるテレビはかなり古い型だから、今の話ではないよなと思っていたら、最後の方で突然、「あっ、これは昭和63年なんだ」とわかって、「へぇー、そうなんだ」と思ったりして。それがわかるのは、主人公の少年の母親(田中裕子)が、「あの人」のことを持ち出すからで、「ええっ、そういう話に持ってくの」とびっくりしてまった。「あの人」より先に死にたくないと言うのだけれど、計算してもこのときの母親の年齢って、まだ50代だろうし、「あの人」は87まで生きたのだから。なんか唐突な台詞なんで、話をそっちに持って行かれてもなぁと思ってしまった。 芥川賞だから仕方ないのだけれど、暗い話。セックスで暴力的な性癖を持つ父親と、その血を受け継いでしまった息子のドラマ。 自分にもそういう性癖があるんじゃないかと葛藤する少年って、どうなんだろう? 実際にそういうことで悩む少年っているのかもしれないけれど、そういう父親を見て過ごした少年って、私の知る限りにおいては、あんな父親にはなるまいと思う子供の方が多い気がするし。 少年は、夏休みで何もしないで、一日中ゴロゴロしているというのも、なんかよくある悪しき日本のゲージュツ映画のパターンで、こういうやつ、どうも昔っから好きじゃないんだよね。バイトするとか、どっか遊びに行くとか、あるいはキッチリ勉強でもしてろよと思ってしまう。それでいてセックス・フレンドの女の子がいたりして。それで自分にも父親と同じ血が流れているからって、悩んだりって、勝手にしてほしいと思ってしまうんだなぁ、こういうの観ると。 こういう小説や映画、好きな人はいるんだろうから、それはそれで個人の好みだろうけど、私はちょっとね。勝手に面白がっていてください。 4月6日記 静かなお喋り 4月5日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |