風雲電影院

宇宙兄弟

2012年5月8日、TOHOシネマズ錦糸町にて。

 人気コミックスを映画化したものだが、原作のコミックスは読んでいない。

 宇宙に魅入られた兄弟が宇宙飛行士を目指す話。

 弟のヒビト(岡田将生)は着実に宇宙飛行士の道を歩み、その夢を実現して、NASAからスペースシャトルに乗って月へ行く。
 一方、兄のムッタ(小栗旬)はというと、会社員になってカー・デザインの仕事をている。ところが30歳を過ぎてから、上司へ暴力を振るい、首になっしまう。再就職のために、就活を続けるが、どこも雇ってくれるところが無い。
 そんなある日、JAXAから書類選考合格の通知が届く。弟のヒビトが、兄に内緒で願書をJAXAに送っていたのだ。
 こうして、ムッタはJAXAの宇宙飛行士になるための最終選考に向けてテストを受けることになる。

 素直に観ていれば、いい話だと思うのだが、なんだか都合がよすぎる話に思えてしまうのは、私がひねくれているからなのだろうか?

 30過ぎてから、なかなか再就職が決まらない男が、そんなにスイスイと宇宙飛行士のテストに勝ち残っていかれるものだろうか? まあ、いろいろと経緯はあったとしても、上司への暴力事件を起こすなんていうのは、かなり問題のある人物だろう、普通。まずその辺からして性格的に宇宙飛行士に向いていない気がしてならない。まあ、元々がコミックスなんだから、このくらいの誇張は必要だったのかもしれない。でも実写ともなると、なんだか白々しく見えてしまうのだよねえ。

 最終選考に残ったのも、審査する側の試験官のひとり星加正(堤真一)が兄弟の事を昔から知っていて、他の反対を押し切って強引にプッシュするから。って、あり得ないでしょ。JAXAがそんな私情が通用してしまう組織だったら、それこそまずいっしょ。

 それで、結局最終選考に残った6人が、密閉された空間で共同生活をして、それを監視している審査官が、その様子を見て、誰を残すのかを決めることになる。ところが、この6人が、私だったら誰ひとり合格させたくないという人物ばかり。
 6人とも、自分たちは試験官に見られている事はわかっているのだから、ウソでもそれに合わせた言動をするはず。中の一人、古谷やすし(濱田岳)に至っては、関西の方言を話す、生粋の関西人。思った事は全て口にしてしまうタイプ。こういう問題を起こしそうな人物が、最終選考まで残っている事が、そもそもありえないでしょ。
 他の人たちもそう。これが試験だとわかっていれば、そんな感情を表に出す事なんてありえません。

 ムッタは、最後に尋ねられる質問に、鮮やかな答をするが、それもよく考えると、あまりにお利口さんな模範解答のような気がしてならない。白々しいんだよね。こんな回答を今の組織は求めているのだとしたら、嫌らしいし、そもそも、こんな質問、するかあ?

 最初に書いたように、観終わって素直に思えば、いい映画なのだが、どうも私には、これを素直に「よかったね」と受け入れられない。困ったね。私がひねくれてるんだな、きっと。

5月9日記

静かなお喋り 5月8日

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