若草の萌えるころ(Tante Zita) 2014年3月12日 BS11放映録画 1968年フランス映画。 若い頃見逃していた映画を今頃になって観るというのも、なんとなく照れくさいところもある。これ、今の若い人が突然何の知識もなく観ると、「なんじゃ、これ」ってなると思う。まぁ、実際、今私が観ても「なんじゃ、これ」なのだが。 これは、『冒険者たち』という、もう、当時の映画青年たちが、「これを観ていない奴とは、話をしない」というくらいかぶれていた映画を撮ったロベール・アンリコが、やはり『冒険者たち』のヒロイン、ジョアンナ・シムカスを主演にして撮った映画。私がこれを観なかったのは、この日本版タイトルに引いてしまったこともあるかも。ジョアンナ・シムカスは観たいけれど、このタイトルは、観に行くには恥ずかしいと思ったのだろう。今だったら、“萌え”という言葉にもっと拒否反応があったかもしれないが。 一応、原作はあるらしいのだが、どこまで忠実なのだろう。とにかくヘンテコな映画なのだ。ジョアンナ・シムカス扮する大学生アニーと同居している伯母が、ある日、脳卒中で倒れてしまう。これがまた時代が時代なのか知れないが、病院に運ばれることも無く自宅のベッドに寝かされている。往診に来た医師から、もう助からないと言われて、死を待つばかり。危篤状態の伯母と一緒にいるのが嫌だと喚くアニー。いや、二十歳そこそこの小娘が死を恐れるのはわかるし、その場にいたくないという気持ちはわかる。ただ、それを口にする、しかも大声で喚くっていうのは行き過ぎでしょ。あの『冒険者たち』の我らがマドンナ、ジョアンナ・シムカスが台無し。 それで、家にいるのが嫌で、ボーイフレンドのバスケット・ボールの試合を観に行って、そのあと家に帰りたくなくて、一晩中、街をほっつき歩くというのが、この映画のストーリーといえばストーリーなのだけれど、どうでもいいようなエピソードばかり。猫を殺して歩く男が出てきたり、羊が車から逃げ出して、それを追っかける男がいたり(意味不明)。アニーに言い寄ってくる男も何人もいて、結局そのうちのひとりと寝ちゃう。ナンダコリャ。それで夜が明けて家に帰ってきたら、伯母さんは死んでいましたとさ。はい、おしまい。 この映画に怒り出す人もいるんじゃないの? ようするに、ロベール・アンリコが『冒険者たち』で使ったジョアンナ・シムカスに惚れて、ひたすら彼女を撮りたかった映画だとしか思えない。そりゃね、さすがにジョアンナ・シムカスはきれいに撮れている。でも〜、ここに描かれるジョアンナ・シムカスって、やな奴なんだよね。まぁ、『冒険者たち』のジョアンナ・シムカスも、才能のない前衛芸術家って、実体のない変な存在だった。かわいい女だけど、アラン・ドロンのパイロットやリノ・バンチェラのエンジニアが惚れるっていうのも、よく考えるとイマイチわからなく思えてくる。案外、今また『冒険者たち』を観直すと、「けっ!」と思うかもしれないな。映画の中の絵空事に夢中になれたのは、あのときあの時代、私がまだまだ若造だったからかもしれないのだから。 それにしても、あの時代の映画だから、みんなよく煙草吸ってるわ。ジョアンナ・シムカスにまでスパスパ吸わせてる。百年の恋とはいわぬまでも、45年の恋も冷めてしまった感じ。 3月13日記 静かなお喋り 3月12日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |