風雲電影院

藁の楯

2013年5月5日
丸の内ピカデリー

 ツッコミどころはいろいろあるのだけど、かなり期待して観に行っただけに失望感が大きかった。

 連続幼児暴行致死容疑者を福岡から東京まで護送する任務を受けたSP5人がいるのだが、被害者のひとりの祖父が大金持ちで、容疑者を殺せば10億円払うと言ったものだから、あらゆる人が殺そうと待ち構えているという話。その設定だけ聞いたら、これは面白そうだと思うわけだけれど、確かに序盤はそれなりに面白い。護送車に乗せて福岡を出発するのだが、ニトログリセリンを積載したトラックは突っ込んでくるし、明らかに目立ちすぎる。それで新幹線に乗れば、またいろいろ問題が起こり・・・っていうんで、始めの方は飽きさせないのだけど、それでもなんかタルいんだなぁ。

 藤原竜也がいい人にしか見えないんだよねぇ。最初は無実の罪で捕まった人間だとばかり思ってた。それが本当に実行犯だったんだねぇ。だったらそれらしくしてくれればいいのにと思う。『ダーティ・ハリー』のアンディ・ロビンソンみたいにさ。な〜んか中途半端なんだよねぇ。

 10億円積まれれば、無関係の人を殺してもいいなんて思うかなぁ。なんか違うと思うし、少なくとも日本人はそうあって欲しくないと思うけど。そうしないと面白くないんだろうけど、容疑者を警護するSPにも敵が混じっているというのも、なんだかねぇ。

 序盤はけっこう面白く見せてくれるのだけど、どんどんタルくなっていってしまう。駅で無関係の子供を人質に取る男が現れたあたりからテンポがおかしくなる。なんだか失速して行ってしまう感じ。このシーンはいらないだろうと思っていると、もうあとはどんどんつまらなくなってしまう。ある事情から新幹線を降りざるを得なくなるのはわかるのだけど、そのあとがタルい。いくら歩いても自動車が一台も通らない道って何だ? そんなところもあるのかも知れないけれど、たまたま通りかかったとみられる自動車が、○○○○○○のクルマって何よ。そのあとも一台も通らないし。もう敵側に見つかってるんでしょ。

 護送チームがとにかくありえない。すぐにキレる永山絢斗って何? よくこんなんでSPになれたね。伊武雅刀がまた、こういう状況では役に立ちそうにない刑事で、子供を人質に取った相手に古臭い対応しかできない。岸谷五郎に関してはネタバレになるから詳しくは書けないけど、ありえんでしょ。松島菜々子は何でSPチームにいるのかわからない。シングルマザーでSP。その設定はまったくありえない話ではないとして譲っても無能すぎ。警護する相手から目を離すなんてことが何度もあってはならないでしょ。

 で、ラスト。山崎努の賞金を払うドンが大沢たかおの主人公と向き合う。これ自体がありえないのだけど、この間、グルッと取り巻いた警察は何してんだろう。まずは容疑者の身柄確保でしょ。しかも、山崎努がステッキを・・・ああーっ、書いてしまいたい! じれったいたらない。そのあとも、なんにもしない警察隊って何?この妙に無駄な時間はなんなんだろうと、イライライライラしてくるエンデイング。

 これだけ期待を持たせて失望した日本映画は、最近類を見ない。三池崇史監督、どうしちゃったんだ?

5月6日記

静かなお喋り 5月5日

静かなお喋り

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